2003 Fiscal Year Annual Research Report
疎水性室温溶融塩中における金属の電気化学的挙動およびレドックス二次電池への応用
Project/Area Number |
03J09160
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山縣 雅紀 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 室温溶融塩 / イオン性液体 / レドックス二次電池 |
Research Abstract |
TFSI系室温溶融塩を用いた非水系レドックス電池を構築するためには,最適な酸化還元対を選択する必要がある.しかしながら,これらの系における遷移金属元素の酸化還元挙動はほとんど報告されていない.本年度はTFSI系室温溶融塩中における遷移金属元素の酸化還元挙動を調査することを目標としており,代表的な遷移金属元素である鉄および鉄の錯体に注目し,この系での電気化学的測定等を行った. 1.ヘキサシアノ鉄酸イオンのレドックス挙動 室温溶融塩を構成する代表的な有機カチオン(1-エチル-3-ブチルイミダゾリウム(EMI^+),1-ブチル-1-n-メチルピロリジニウム(BMP^+),トリメチル-n-ヘキシルアンモニウム(TMHA^+))とヘキサシアノ鉄酸イオン(以下[Fe(CN)_6]^<3->)を合成し,それぞれEMITFSI,BMPTFSI,TMHATFSIの各溶融塩に溶解させ,電気化学的な測定を行った結果,[Fe(CN)_6]^<3->/[Fe(CN)_6]^<4->のレドックス対が-1.12,-1.48,-1.20V(vs.Ag/Ag^+)に観察された.このレドックス対のピーク電位差がおよそ60mVであることから,[Fe(CN)_6]^<3->/[Fe(CN)_6]^<4->の可逆的な1電子反応であることが判明した.また,種々の溶媒中における[Fe(CN)_6]^<3->/[Fe(CN)_6]^<4->の酸化還元電位とその溶媒のアクセプター性には相関関係があることが知られており,本研究の結果からEMITFSI,BMPTFSI,TMHATFSIの各室温溶融塩のアクセプター性がそれぞれ42,32,39であり,アルコール類と同程度であることが明らかになった.また,溶融塩のアクセプター性の発現はアニオンではなく,カチオンが支配的であることも分かった. 2.ハロゲン化鉄イオンのレドックス挙動 TFSI系室温溶融塩中における電気化学活性種の溶存状態や錯体形成の電極反応に対する影響を調査することを目的とし,鉄-臭化物錯体の溶存状態や電極反応について検討を行った. FeBr_3溶解したBMPTFSI中におけるGC電極上でのCVと,これに徐々にBMPBrを添加させた場合のCVの結果から,BMPTFSI中ではFeBr_4^-として安定に存在することが判明した.Br^-はドナー性の高いイオンであるため,ドナー性の低い溶融塩中のTFSI^-とは配位子交換反応などが起こらないことが分かった.また,フリーの鉄イオンの酸化還元挙動は準可逆的であるのに対し,この錯体の酸化還元反応は可逆的であることから,錯体を形成することでTFSI^-の影響が弱まり,電子移動が速くなった結果であると考えられる.
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