2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J09192
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
齊藤 郁子 沖縄県立芸術大学, 付属研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 鎌倉芳太郎 / 「鎌倉芳太郎資料」 / 「鎌倉ノート」 / 尚家所蔵古文書 / 沖縄県立沖縄図書館 / 加藤三吾 |
Research Abstract |
人間国宝・工芸家として有名である鎌倉芳太郎の沖縄研究に関する業績について研究を行った。 まず、沖縄県立芸術大学附属図書・資料館所蔵の「鎌倉芳太郎資料」のうち、古文献筆写資料の書誌的面を考察してみた。これには出典・親本等を明記していない資料も多いのだが、沖縄の旧王家である尚家所蔵の古文書を筆写・校合に使用しているものも多く見られる。また、当時の沖縄県立沖縄図書館所蔵の本も同様に多く筆写しているが、親本を明記していない資料であっても、当時の沖縄図書館の所蔵本の目録に見られる文献と重なるものが多いこと、初代の図書館長であった伊波普猷の蔵書をもとに図書館の資料としたと考えられる文献の筆写と見られるものが数点見られることなどから、県立図書館の資料をかなりの頻度で活用していたと推測できることがわかった。 また、鎌倉芳太郎の民俗学・文学研究について、フィールドノートの記載内容を検証してみると、その記録はつねに視覚的であり、全体の構造を把握したうえで考察することをめざしたようであり、併せて歴史書の記載事項と付き合わせ通時的な把握をも行っているのである。この、あらゆる物・事象の細部にまで即して微細に考究する鎌倉の方法論は、もともと美術・美術史の専門的な教育を受けたことによるものと考えられるが、美術研究から出発してはいても美術の枠にとどまらない博物学的にして人文科学の総合的研究を行ったと位置付けることができそうである。そういった意味で鎌倉に先行する研究者と思われる加藤三吾と比較してみると、鎌倉は「自然科学」の分野にはほとんど触れていないものの、全体の研究内容の広さと深さ、また科学性という点においては飛躍的に研究を進歩させた人物ということができるのである。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 齊藤 郁子: "加藤三吾の沖縄研究-『琉球乃研究』をめぐって-"沖縄文化(沖縄文化協会発行). 第39巻1号. 17-49 (2004)
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[Publications] 齊藤 郁子: "「鎌倉芳太郎ノート」記載文献資料について"沖縄芸術の科学(沖縄県立芸術大学付属研究所紀要). 第15号(未定). (2004)
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[Publications] 宮古島の歌研究会[編]: "宮古島の歌(暫定版)"宮古島の歌研究会(自家出版). 152 (2003)
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[Publications] 齊藤 郁子, 嵩原建二[編]: "折居彪二郎資料「琉球及び大隅列島採集日誌(1921年)"沖縄大学地域研究所. 160 (2003)