2003 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質相互作用を利用したイネ低温シグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
03J09217
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
須藤 慶太 東京都立大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 低温 / イネ / コムギ / リン脂質 / Ethanolamine |
Research Abstract |
イネは地球上の広範囲な地域で栽培されており、その環境条件は多様である。一方で、イネは熱帯原産であることから低温に対する感受性が高く、高緯度地域における安定な生産を脅かしている。コムギはイネと同じ単子葉植物であるが、低温に対する抵抗性が高い。したがって、コムギの低温耐性に関与する遺伝子をイネに導入することにより、低温に耐性をもつイネを作製することが可能である。そこで、本実験では、コムギの低温耐性に関与する遺伝子を単離し、その機能を解明することを目的とした。 コムギは低温下におくと、細胞膜を構成する主要なリン脂質フォスファチジルエタノールアミン(PE)量が増加し、低温耐性を獲得すると考えられている。酵母ではPEはエタノールアミンから、主にNucleotide pathwayと呼ばれる3段階の反応を経て生成され、それぞれにEthanolamine kinase (EKI)、CTP:phosphoethanolaminecytidylyltransferase(ECT)、Ethanolamine phosphotransferase(EPT)という酵素が関与している。コムギでは前者二種の遺伝子は既に単離され、解析が進められているが、EPTに関しては報告例が無かった。そこで、私はコムギのクラウン組織からcDNAライブラリを作製し、EPT遺伝子TaAAPT1を単離した。TaAAPT1は酵母のEPTと同様に膜貫通ドメインを持ち、アミノ酸一次構造も保存されていた。さらに低温処理したコムギではTaAAPT1遺伝子の発現が増加した。次に、この酵素の細胞内局在を調べる為にGFP融合遺伝子を作製し、パーティクルガンを用いて、コムギ葉鞘及び葉に導入した。観察の結果、TaAAPT1酵素は小胞体及び核膜近傍に局在した。したがって、これらの結果から、低温下では、小胞体もしくは、核膜近傍でPE生合成に関与するTaAAPT1の発現が増加し、その結果として、PE量が増加すると考えられる。現在、TaAAPTの酵素学的性質の解析を行っている。
|