2004 Fiscal Year Annual Research Report
再生産労働の商品化と国際移動:フィリピン、中国及び日本の相互依存関係
Project/Area Number |
03J09334
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
安里 和晃 龍谷大学, 経済学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 移住労働の女性化 / 少子高齢化 / 外国人家事労働者 / 外国人介護労働者 / 福祉レジーム / 台湾 / 施設介護 / 再生産労働 |
Research Abstract |
2004年度は移住労働の女性化、特に介護労働に着目して調査を行った。2004年7月、11月、2005年1月、3月に台湾における13の高齢者介護施設、シンガポールにおける4の施設の経営者、看護師、主任、外国人労働者らに対してインタビューを行った。また日本国内においても日比FTAの交渉当事者などに対してインタビューを行った。調査結果については別添の通り論文などで著したほか、東京、オックスフォード、ソウルで開催された国際会議などで発表を行った。調査の主な知見は以下の通り。施設介護における外国人労働者の導入は、介護の需要、供給の両面に原因がある。需要については高齢化の進展、また家族介護の困難から介護が外部化されていることにより介護需要が増大している点があげられる。供給側からは高学歴化によって介護を職業として選択しなくなっていること、女性の就業の選択肢の増加によって、女性職とされた介護に女性が参入しなくなっていること、また今後も少子化が進展することから労働力自体が減少すると推測されることなどから介護の需要の増大に見合う供給の確保が困難であると考えられる。外国人労働者の導入にはコミュニケーション、介護技術などの問題が指摘される一方、メリットを指摘する施設も多い。端的には安定的で柔軟な労働力ということである。外国人労働者は2年間契約で離職率が低く、就業先の変更が認められないことという点において安定的で雇用者にとっては計画的な配置が可能であること、また住み込みで生活の本拠にないことから家庭の事情にも左右されないこと、休日における就労に積極的なことから地元の労働者が避ける休日や夜勤、冠婚葬祭時における人員確保に有利である点が柔軟な労働力として指摘できる。しかし安価な労働力としての外国人介護労働者は台湾、シンガポールにおいて当てはまらないことは調査から得た重要な知見である。
|