2005 Fiscal Year Annual Research Report
生体構成有機物の年令からみた陸上生態系の食物網の構造
Project/Area Number |
03J09346
|
Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
兵藤 不二夫 総合地球環境学研究所, 研究部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 食物網 / 安定同位体 / 放射性炭素(^<14>C) / 食物年齢 / シロアリ |
Research Abstract |
二酸化炭素の形で大気中にある放射性炭素(^<14>CO_2)は宇宙線の作用による上空での生成と放射性崩壊(半減期:5730年)による消失のバランスにより、大気中ではおおよそ一定量に保たれている。しかし、^<14>Cは冷戦期の核実験によって大量に作られ、その後1963年の核実験禁止条約の締結後、急激に減少している。本研究では、その核実験によって大量に作られた^<14>Cをトレーサーとして用いて、陸上食物網の構造に時間軸を導入することを目的としている。すなわち、大気14Cは光合成によって植物に取り込まれ、その年々の減少は植物の一次生産物にも反映されている。よって、これまでの既知の大気14Cの記録と消費者の体の^<14>C含量を測定し比較することで何年前に作られた一次生産物であるをその消費者は利用しているかが明らかになる。 従来の食物網の研究では一次生産から消費者へとつながる様々な量の物質やエネルギーの流れを対象としていたが、それらの流れには別の軸、すなわち時間軸が存在することはあまり考慮されていなかった。そこでの時間軸とは、植物が大気中の二酸化炭素を固定してから、その一次生産物が消費者によって利用されるまでの時間である。私はこの時間軸のことを食物年齢(diet age)と定義した。 本研究では熱帯生態系の重要な分解者であるシロアリを対象にその食物年齢を上述の14C分析から推定した。その結果、シロアリの食物年齢は7年から50年という幅をもつこと、また土壌食シロアリでは7-13年、木材食シロアリでは12-18年などその食性に応じた値を持つことが明らかとなった。また熱帯雨林の主要な送粉者であるハリナシバチ、ミツバチの14C含量を測定したところ、ハリナシバチでは2-4年、ミツバチでは0年と同じ生食食物網に属する生物間でも、食物年齢が異なることが明らかとなった。
|
Research Products
(1 results)