2005 Fiscal Year Annual Research Report
有孔虫類の多様性創出機構の解明:生殖様式や古海洋環境変動が遺伝的分化に及ぼす影響
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03J09358
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
土屋 正史 独立行政法人海洋研究開発機構, 極限環境生物圏研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 底生有孔虫 / 分子系統解析 / 貧酸素環境 / 環境への応答様式 / 海洋環境変動 / 細胞内共生生物 / クレプトプラスト / バクテリア |
Research Abstract |
現在や過去の環境変遷を通じた有孔虫の多様性創出機構の解明と生物の多様性を生みだす進化・遺伝学的背景を明らかにすることを目的にし,17年度は次の2項目を中心に研究を行った.これらの研究を通じて,過去の海洋環境変動・特に貧酸素環境と酸化的な環境における有孔虫類の応答様式を明らかにした. 1.貧酸素環境における有孔虫の応答様式 貧酸素環境下での底生有孔虫の生存戦略を理解することを目的に,貧酸素環境に生息するVirgulinella fragilisを対象に,細胞内のバクテリアとクレプトプラスト(盗葉緑体)の起源を分子系統解析から明らかにした. V.fragilisは生息環境ごとに異なる起源のクレプトプラストを獲得して細胞内に保持し,一部のクレプトプラストには光合成の可能性を示唆する構造物が存在した.細胞表面付近には硫酸還元菌が存在し,これにより生成される硫化水素は,細胞内部のクレプトプラストの光合成によって無毒化している可能性がある.一方,酸化的環境にも貧酸素環境と同種のバクテリアが存在することから,バクテリアは有孔虫細胞に寄生し,ホストやクレプトプラストによって作られる有機物を掠め取っている可能性もある. 2.軟質殻底生有孔虫の遺伝的多様性 東赤道太平洋深海底ノジュール分布域および黒島海丘に生息する軟質殻底生有孔虫を中心に,その群集と遺伝的な多様性を明らかにした.真核生物のユニバーサルプライマーを用いてSSU rDNAの約1,000塩基対の塩基配列を決定し分子系統解析を行った. 東赤道太平洋深海底では,有孔虫類の塩基配列は軟質殻底生有孔虫の系統に含まれ,単室型の有孔虫と近縁であった.一方,冷湧水の群集は別のクラスターにまとまる.黒島の堆積物は1cm以深では貧酸素となるが,東赤道太平洋深海底では,酸化的な堆積物が存在する.どちらの海域でも酸化的な環境から有孔虫の配列が得られたが,酸化的な深海底と冷湧水に生息する軟質殻底生有孔虫は,異なる遺伝的な集団によって構成されていた.
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] A close relationship between Cercozoa and Foraminifera supported by phylogenetic analysis based on combined amino acid sequences of three cytoskeletal proteins (actin, α-tubulin, and β-tubulin).2005
Author(s)
Takishita, K., Inagaki, Y., Tsuchiya, M., Sakaguchi, M., Maruyama, T.
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Journal Title
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