2003 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルスコア蛋白による転写因子Ets-1の活性化
Project/Area Number |
03J09387
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
青木 宏 日本大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | HCVコア蛋白 / シグナル伝達 / MAPキナーゼ / 転写活性化 |
Research Abstract |
最近申請者はHCVコア蛋白を発現するHepG2細胞において、Raf-1/MAPK依存性に転写因子Ets-1 mRNAが発現亢進していることを見出した。Ets-1は肝癌を含む種々の癌組織において発現亢進していることが報告されており、特にEts-1によるmatrix metalloproteinase(MMP)-1・7の活性化と癌細胞の浸潤・転移能との関連が注目されている。そこで申請者はHCVコア蛋白発現に伴うEts-1およびMMP-1・MMP-7の活性化について検討を行った。 (1)HCVコア蛋白発現細胞における転写因子Ets-1の発現亢進についての検討:HCVコア蛋白を安定的に発現するHepG2細胞(HepΔNCTH細胞)よりRNAを抽出し、^<32>P標識Ets-1 cDNA probeを用いたNorthern blot法によってEts-1 mRNAの発現量を比較検討したところ、HepΔNCTH細胞におけるEts-1 mRNA発現量は親株HepG2細胞における発現量よりも有意に増加していた。またSYBR greenを用いた定量的RT-PCR法にて、HepΔNCTH細胞におけるEts-1 mRNAの発現量はHepG2細胞における発現量の約3倍であった。 Ets-1 mRNAの発現亢進について、MAPK経路の関与の有無を検討するため、MAPK kinase(MEK)阻害剤PD98059を培地に添加し同様の解析を行ったところ、PD98059存在下でのHepΔNCTH細胞におけるEts-1 mRNAの発現量はHepG2細胞のそれと差異がなかった。さらにHepΔNCTH細胞より蛋白を抽出し、Western blot法にてEts-1蛋白の発現量を検討したところ、HepΔNCTH細胞におけるEts-1蛋白の発現量は、親株HepG2細胞に較べ有意に増加していた。 (2)HCVコア蛋白発現細胞における転写因子Ets-1のDNA結合能についての検討:HepΔNCTH細胞より核蛋白を抽出し、^<32>P標識した2本鎖オリゴヌクレオチドDNA probe(Ets-1結合配列を含む)を用いたElectro Mobility Shift AssayにてEts-1蛋白とEts-1結合配列の結合能を確認した。結合の特異性については抗ヒトEts-1抗体を用いたsuper shift assayにて確認した。HepΔNCTH細胞においてEts-1蛋白のDNA結合能は、親株HepG2細胞に較べ有意に増加していた。この際陽性コントロールとしてTGF-α(100ng/ml)にて刺激したHepG2細胞を用いたが、Ets-1蛋白のDNA結合能はHepΔNCTH細胞のそれとほぼ同様であった。 (3)HCVコア蛋白発現細胞におけるMMP-7の発現亢進についての検討:HepΔNCTH細胞よりRNAを抽出し、RT-PCR法を用いてMMP-7 mRNAの発現量を比較検討したところ、HepΔNCTH細胞におけるEts-1 mRNA発現量は、親株HepG2細胞に較べ有意に増加していた。
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