2003 Fiscal Year Annual Research Report
バンコマイシン耐性腸球菌のバシトラシン耐性化阻害法の開発
Project/Area Number |
03J09389
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
津田 啓方 日本大学, 歯学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | バシトラシン / Streptococcus mutans / バンコマイシン耐性腸球菌 / ABCトランスポーター / 2成分制御系 |
Research Abstract |
本研究は、報告者が以前同定したStreptococcus mutans(以下S.mutansと略す)のバシトラシン耐性に関与する遺伝子群mbrABCDによるバシトラシン耐性メカニズムを分子レベルで解明し、将来予測されうるバシトラシン耐性バンコマイシン耐性腸球菌の出現に対する対処法の可能性を探ることを目的としている。現在までに、以下の成果を得た。 (1)推定アミノ酸配列がABCトランスポーターと相同性の高いMbrABがバシトラシンを不活化する物質を排出している可能性を検証するために、Xc株(野生株)またはXc106株(mbrABCD遺伝子を欠失したXc株)の培養上清を様々な割合で培地中に加え、それら各々の培地中でのXc106株のバシトラシン存在下での増殖を経時的に観察した。その結果、Xc株とXc106株の培養上清がバシトラシン存在下でのXc106株の増殖に与える影響に差は認められなかった。 (2)MbrABがバシトラシンを排出していると考えるならば、S.mutansは環状ペプチド系抗生物質であるバシトラシンと構造の類似した物質をMbrABにより放出している可能性が高い。このことから、ペプチド合成に関与しているタンパク質と推定アミノ酸配列の相同性が高い遺伝子を中心として、202の遺伝子をS.mutansのデータベースより選択し、その情報をもとにDNAマイクロアレイを作成した。現在、バシトラシンの作用している時とそうでない時のS.mutans野性株の総RNAを抽出し、トランススクリプトーム解析をおこなっているところである。 (3)推定アミノ酸配列の相同性が2成分制御系と高いMbrCDがMbrABを正に制御している可能性を検証するために、まず、バシトラシンを作用時(致死量に至らない濃度)と作用していないときのXc株におけるmbrAB遺伝子の発現量の差をリアルタイムRT-PCR法で調べた。その結果、バシトラシンにより、約80倍のmbrAB遺伝子が誘導されていた。 今後は、上記の誘導にMbrCDが関与しているかどうかを検証し、関与しているならばmbrCD遺伝子によるmbrAB遺伝子の発現調節機構の解明を行っていく予定である。
|