2004 Fiscal Year Annual Research Report
バンコマイシン耐性腸球菌のバシトラシン耐性化阻害法の開発
Project/Area Number |
03J09389
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
津田 啓方 日本大学, 歯学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | bacitracin resistance / two-component system / ABC-transporter / VRE / regulation / Streptococcus mutans / transcriptome |
Research Abstract |
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の出現が医療現場での深刻な問題になっている。それに対してバシトラシンのVRE排除への可能性が報告されている。一方、口腔内常在菌のSreotococcus mutans (Sm)はバシトラシン耐性である。Smが糞便中より検出されることから、バシトラシンの高頻度の使用によりSmのバシトラシン耐性遺伝子がVREに形質転換され、バシトラシン耐性VREが出現する可能性がある。本研究ではSmのバシトラシン耐性に関与している遺伝子を同定し、それらの遺伝子産物によるSmのバシトラシン耐性メカニズムとそれらの遺伝子産物の発現調節機構を分子レベルで解明し、バシトラシン耐性菌の出現に対する対処法の可能性を検討することを目的としている。 現在までにバシトラシン耐性に関与している2つの遺伝子領域を決定した。一つは菌体表層多糖抗原の合成に関与する遺伝子群(rgpABCD)で、もう一つは2成分制御系(mbrCD)とABCトランスポーター(mbrAB)にアミノ酸配列の相同性の高いタンパクをコードする遺伝子群であった。これらの二つの領域を欠失させた変異株は野生株に比べそれぞれ約14倍、約120倍バシトラシン感受性が高かった。 次に、Smの全遺伝子トランススクリプトーム解析では、バシトラシンの作用時に5倍以上mRNAの発現が上昇する遺伝子は7遺伝子であり、その中でもmbrAB遺伝子が他の遺伝子に比べてバシトラシンによる発現誘導が特に強かった(約35倍)。また、mbrAB欠失株は野生株に比べ約120倍感受性が高かったのに対して、発現量5倍以上の他の遺伝子を欠失した変異株は野生株の感受性と等しかった。これらの結果からmbrAB遺伝子の発現誘導がSmのバシトラシン耐性獲得に最も重要であることが示唆された。 さらに、推定2成分制御系の各成分(mbrC、mbrD)の欠失変異株ではバシトラシンによるmbrAB遺伝子の発現量の変化は認められなかった。よって、mbrCDがmbrABの発現調節に関与している事が示唆された。
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