2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J09431
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Research Institution | The Middle Eastern Culture Center in Japan |
Principal Investigator |
徳永 里砂 財団法人中近東文化センター, 学術局・エジプト調査室, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 岩壁碑文 / 文字 / 交易路 / アラビア半島 / シナイ半島 |
Research Abstract |
研究代表者は、アラビア半島に数多く点在する古代岩壁碑文を史料に、古代アラビア半島における交易路に関して実証的研究を行っている。 2003年度の当初の調査予定地はサウディ・アラビア南西部のビィル・ヒマー地域であったが、サウディ・アラビア国内の治安の悪化に鑑み今年度の主要調査地の変更を申し出たところ、これが学術振興会により認められた為、エジプト・シナイ半島南西部において二度の岩壁碑文調査(夏期・冬期)を行った。エジプト、アラビア、紅海、地中海に接するシナイ半島は時代を通じて重要な交通路で、ここにおいても多数の岩壁碑文が見られる。ダハブ、聖カタリーナ修道院、トゥール市を拠点に南西部のワーディーを調査した結果、アラビア文字碑文、ナバテア文字碑文の他、十数点のサムード文字碑文が発見・確認された。今年度はこれらの写真撮影、計寸、簡易GPSによる位置情報の記録を行った。これらのサムード文字碑文の年代は紀元前1千年紀後半のものと考えられるが、更なる検討が必要である。碑文史料は、2004年度中の刊行を目指し、現在整理・解読中である。 また、2002年に行ったビィル・ヒマー地域における第二次岩壁碑文調査で記録した碑文史料をもとに行ってきた基礎的研究に関しては、博士論文としてまとめ、2003年12月に慶應義塾大学文学研究科に提出した(現在審査中)。本研究は、同地域の砂漠の岩壁に刻されたサムード文字碑文に見られる多様な文字の分類・分析を通じて文字種相互の相対年代を明らかにするものである。これによって文面からは推測不明であった数多くの碑文の年代を知る手がかりが得られることになり、今後の古代アラビア半島交易路の通時的研究に大いにプラスになると考えている。また、この研究成果の一部を2003年10月に開催された日本オリエント学会大会(於金沢大学)等で発表した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Risa Tokunaga: "South Arabic Graffiti in the Eastern Desert (Wadi Hammamat and Wadi Manih)"Annales du Service des Antiquites de l'Egypte. 77(PL.I and II). 181-186 (2003)
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[Publications] 徳永 里砂: "古代南西アラビアの砂漠の神々-ビィル・ヒマー地域の岩壁碑文研究から-"時空をこえた対話-三田の考古学-(六一書房). (単行本、印刷中). 279-283 (2004)
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[Publications] 徳永 里砂: "古代オリエントII"史学雑誌(2003年の歴史学界-回顧と展望). 113編第5号(掲載予定)(未定). (2004)