2005 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子の微生物生態系内水平伝播を利用した新規環境浄化技術に関する研究
Project/Area Number |
03J09436
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
松井 一彰 東北学院大学, 工学部, 特別研究員
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Keywords | トランスポゾン / 遺伝子の水平伝播 / トランスポゾンの拡散 / 有機水銀耐性細菌 / 細菌による水銀汚染浄化 / TnMERI1 / Bacillus属細菌 |
Research Abstract |
細菌が持つ環境浄化に有効な遺伝子を、最近が本質的にもつ遺伝形質伝播機構を利用して汚染環境中の土着細菌群集に伝播させる「新規環境浄化法」開発のための基礎的知見の提供を目的に研究をおこない、以下のような知見を得ることができた。 1.Bacillus属細菌がもつ有機水銀分解能をコードしている可動性遺伝子(トランスポゾン:TnMERI1)を対象に、TnMERI1の転移能力の検証をおこなった。その結果TnMERI1が実際に転移能力を有しており、伝達性プラスミドを介して細菌間で伝播されることを実験的に再現できた。またTnMERI1の転移は、紫外線照射やヒートショック等による細菌へのストレス付加に影響されにくい現象であることも分かった。これらの知見は論文としてまとめ、FEMS Microbiology Letters誌に発表した。 2.上記TnMERI1様トランスポゾンを持つBacillus属細菌を、世界各地の土壌より発見する事ができた。さらに詳細な菌株の同定やトランスポゾン近辺の塩基配列解析をおこなった結果、TnMERI1様トランスポゾンを持つ同一菌株が広く世界中に拡散されている事がわかった。また自然環境中の細菌間では、TnMERI1様トランスポゾンが水平伝播され、拡散していることもわかった。以上の結果から、TnMERI1様トランスポゾンの水平伝播は世界中で起きている普遍的な現象であり、TnMERI1を有機水銀汚染環境の土着細菌に伝播させて、細菌による有機水銀汚染の浄化を促進させる事は、安全かつ有効な浄化方法であると考えられる。これらの知見は現在論文としてとりまとめており、成果の一部は2006年度の国際学会(国際微生物生態学会)にて発表予定である。
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