2005 Fiscal Year Annual Research Report
グリア-神経相関作用を用いた網膜変性疾患の治療的研究
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03J09476
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
原田 知加子 (財)東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 網膜変性疾患 / 神経細胞死 / 神経栄養因子 / グリア細胞 / グリアー神経相関 / 視細胞 / 虚血 / 網膜発生 |
Research Abstract |
現在世界中で約4000万人ともいわれる人々が網膜疾患による視機能障害に苦しんでいる。このうち特定疾患に指定されている網膜色素変性症の本態は、視細胞のアポトーシスであることがわかっている。以前我々は眼球内に投与された神経栄養因子が視細胞死を抑制する際、その作用の一部が網膜の特殊なグリアであるMuller細胞を介した間接作用であることを見い出した(Neuron,2000)。またこの発見により変性の主座となる視細胞そのものではなく、グリア-神経間のネットワークをターゲットとした新しい治療法に期待が持たれることとなった(J Neurosci,2002)。一連の研究を発展させた本課題では、Muller細胞特異的に神経栄養因子の受容体を欠損させたマウスを作成して、その発生過程を検討した。完全欠失型のノックアウトマウスでは視細胞の発生に遅延が見られるとの報告があるが、我々のマウスではそうした異常は認められなかった。次にこのノックアウトマウスを網膜色素変性症のモデル動物と交配させ、視細胞変性の進行に与える影響を観察した。通常の視細胞変性マウスでは生後3週目までにほとんどの視細胞が死滅する。しかし我々のマウスと交配したモデルでは視細胞変性の始まる時期や病期の進行に変化がある可能性が考えられた。その他に今年度は、発生期網膜における低親和性神経栄養因子受容体p75^<NTR>による網膜神経節細胞死の制御や、網膜虚血障害時におけるapotosis signal-regulating kinase 1(ASK1)の役割、網膜神経前駆細胞に発現する転写因子のMuller細胞発生への関与について発表した。また糖尿病網膜症での網膜前膜形成に関与する様々な因子に関する総説を発表した。今後もグリアの発生メカニズムの理解を深めつつ、グリアー神経相関を最大限に利用した神経再生療法の構築に向けて、さらに解析を続ける予定である。
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