2004 Fiscal Year Annual Research Report
家族政策を支える法理念の基礎的考察(ドイツ家族負担調整を手がかりとして)
Project/Area Number |
03J09550
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
倉田 賀世 北海道大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 社会保障法 / 家族政策 / ドイツ |
Research Abstract |
本年度は昨年度に引き続き、ドイツにおいて基本法6条1項という規範原理が家族政策に対して有する効果に関する具体的考察を進めた。考察にあたってとりわけ着目したのが2001年に連邦憲法裁判所で出された公的介護保険の保険料徴収に関する違憲判決である。判決では児童を養育したか否かを考慮することなく、被保険者から一律に保険料を徴収することが基本法3条1項と結びついた6条1項に反するということが明言された。 判決および判決に関わる論文を考察した結果、規範理念との関係において次のような結論を得ることができた。すなわち、この判決によってドイツでは賦課方式の財源システムを選択している社会保険制度において、児童の養育という実質的な貢献と、保険料の支払いという金銭的な貢献とを同等に扱うことが、基本法の要請であることが明らかになったといえる。つまり基本法6条1項での家族の保護という規範は、公的介護保険制度においては児童の養育を通じて家族に生じる経済的負担を、保険料徴収の際に考慮することを立法者に義務づけるという点にその実質的効果があると考えることができるのである。 とはいえ上記の結論の類似の制度への適用可能性に関しては更なる論証が必要となる。というのも、規範的要請の具体化は個々の制度ごとの財源システムあるいは、給付の方法に左右され得るからである。実際ドイツでは、現在この判決の射程が議論の対象となっている。その際同様の財源システムを選択している年金保険制度への適用可能性が最大の論点である。 本年度はこの点に関するドイツの議論状況をより詳細に検討するために渡独し、更なる資料収集を行っている。資料の収集ならびに分析は現在進行中であり、次年度においても継続して行う予定である。
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