Research Abstract |
北海道東部の大規模酪農地域に位置する2流域の河川水質水文環境を継続的にモニタリングした.2流域の草地率,林地率,飼養牛頭数密度に大差はみられなかったが,一方の流域(MB)は,河畔緩衝帯がなく,河川は直線化され改修が施されていた.他方(HY)は,河畔緩衝帯が存在し,河川形態は自然の状態を維持していた.河畔環境と河川形態が異なる2つの草地酪農流域において,河川水質を比較し,河畔緩衝帯による水質保全機能の効果を定量的に検討した. 平水時と降雨流出時における水質濃度と窒素比負荷を比較したところ,平水時にはT-N, NO_3-Nについて,MBよりもHYにおいて低濃度を示した.また,T-N比負荷は,HYにおいてMBよりも74%低い値を示し,2流域におけるT-N比負荷の差は,NO_3-N比負荷によるものであった.平水時には,河畔湿地における脱窒作用や河畔植生による窒素吸収によってNO_3-Nが減少するため,窒素濃度,比負荷ともにHYにおいて低い値を示したと推察した. 降雨流出時には,全水質項目についてMBよりもHYで低濃度を示した.特に,TON, NH_4-N, T-P, SSといった地表に発生源がある水質項目の差が大きかった.降雨流出時のT-N比負荷は,MBに対してHYは70%の比負荷であった.そして,T-N比負荷の構成をみると,NO_3-N比負荷は2流域で差がほとんどみられなかったものの,その他の窒素については,MBに対してHYでは67%の比負荷であった.降雨流出時におけるNO_3-N以外の窒素負荷は,大部分が懸濁性有機態窒素であり,降雨流出時には,河畔緩衝帯によって懸濁成分の濃度,比負荷の低下が大きいことが明らかになった.これは,河畔緩衝帯の植性による懸濁成分の捕捉作用によるものと推察された.
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