2003 Fiscal Year Annual Research Report
近縁種との比較を通したモンシデムシ亜科の育児行動の進化の解析
Project/Area Number |
03J09627
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 誠治 北海道大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | モンシデムシ属 / コクロシデムシ / 育児行動 / 種間托卵 |
Research Abstract |
親による子への投資は進化生態学の中心的テーマの一つである。特に昆虫にみられる様々な育児行動は性選択や配偶行動などの観点から、またハチ、アリなどの真社会性昆虫へ至る進化の道筋としても注目されている。 モンシデムシ属の昆虫はネズミなど小型の脊椎動物の死体を地中に埋め込み、それを餌として幼虫を育てる亜社会性昆虫である。彼らの育児行動は昆虫の中でも特に高度なもので、その生態について様々な報告がある。最近シデムシ科の系統関係がほぼ明らかになり、系統関係を考慮した比較法が可能になった。さらにモンシデムシ属に近縁で、比較するに適当でありながらその生態がほとんどわかっていなかったコクロシデムシに関する研究をすることによって、これまでモンシデムシ属で得られている知見と併せてどの様な形質が育児行動の進化につながったのかが検証できると考え、研究を行った。 本年度の主な研究内容は以下の通りである: 1.モンシデムシ属とコクロシデムシの配偶行動の違い・・・2属間で繁殖習性が大きく異なる事から、種内競争や配偶行動にも違いがみられるのではないかと考えた。そこでモンシデムシ属のヨツボシモンシデムシと、コクロシデムシ属のコクロシデムシを用い、2種の行動を比較した。その結果は15年度日本昆虫学会にて発表し、現在論文として投稿中である。 2.コクロシデムシの防衛行動・・・コクロシデムシはこれまで子への投資を行わないとされていたが、産卵後もその場に長くとどまる。この行動は子を防衛しているのではないかと考え、競争者、捕食者からの防衛の効果を調べた。 3.コクロシデムシの托卵行動・・・コクロシデムシの特徴的な行動としてモンシデムシ属への托卵が報告されているが、報告されている托卵される種は限られている。托卵されない種はなぜされないかについて検証した。その結果は15年度動物行動学会にて発表し、現在投稿準備中である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Nagano, M: "Spatio-temporal distribution and food-searching strategy differentiations between two Silphid beetles, Eusilpha japonica and E. brunnicollis (Coleoptera, Silphidae)."ELYTRA. 31. 199-208 (2003)
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[Publications] Nagano, M: "Phenology and habitat use among Nicrophorine beetles of the genus Nicrophorus and Ptomascopus (Coleoptera : Silphidae)."Edaphologia. 73. 1-9 (2003)
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[Publications] 鈴木誠治: "モンシデムシ最近の話題(1)育児行動"昆虫と自然. 38(10). 32-35 (2003)
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[Publications] 鈴木誠治: "モンシデムシ最近の話題(2)死体をめぐる競争"昆虫と自然. 38(12). 32-34 (2003)