2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J09698
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
亀谷 学 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イスラーム史 / 貨幣史 / 古銭学 / 中世史 / イラン |
Research Abstract |
本年度にはアラブ・サーサーン銀貨について古銭学的方法による研究及び歴史学的方法による文献研究を行なった。六月から八月にかけてアメリカ合衆国ニューヨーク市に滞在し、アメリカ貨幣学協会(American Numismatic Society)において資料調査を行い、その成果を同協会の主催する国際学会『サーサーン朝イランの遺産』("The Heritage of Sasanian Iran")において口頭で発表した。この発表はダーラーブギルドというイラン東部の貨幣発行所の特殊性に着目した研究であり、ウマイヤ朝期のカリフと東方総督の関係が従来考えられていた単純なものではなく、軍営都市のアラブ戦士や旧サーサーン朝領域の住民との関係で変化する不安定なものであったことを論証した。 十月から二月にかけてはエジプト・アラブ共和国に滞在し、現地の貨幣資料を調査するとともに、アラビア語写本研究所(Ma'had al-Makhtutat al-'Arabiya)において当該時期に関する史料の写本調査を行い、数点をマイクロフィルムとして入手した。その他アラビア語史料の収集に努め、多くの年代記史料・地理書史料などを入手した。 またアラブ・サーサーン銀貨発行の理由を考察した論文「第一次内乱前後におけるアラブ・サーサーン銀貨の発行」(仮題)を投稿中である。この論文では、貨幣資料と文献資料を対照して分析し、アラブ・サーサーン銀貨の発行は、イラク地方の両軍営都市に在住するアラブ戦士軍団を維持していくための俸給制度の基盤として期待されたものである、ということを明らかにした。
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