2003 Fiscal Year Annual Research Report
フェア・ユースにみる著作権法の公序-契約によるオーバーライド問題を契機として-
Project/Area Number |
03J09713
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村井 麻衣子 北海道大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 著作権法 / フェア・ユース / アメリカ / オーバーライド問題 / 著作権制限規定 |
Research Abstract |
本研究は、アメリカ著作権法におけるフェア・ユースに関する判決や議論を題材として、著作権法における「公序」の内実を探り、契約によるオーバーライド問題への示唆を提供することを目指すものである。そのために、法と経済学の視点に基づく第一のアプローチと、効率性では測ることのできない「自由」や「民主主義」といった価値を考慮する第二のアプローチの両面から検討する手法をとり、関連する判決や議論を丹念に検討することにより、著作権法の「公序」の構成要素を体系的に分析することを試みてきた。 しかし、作業を進めるにつれ、例えば、外部経済性を有する著作物利用について著作権を及ぼすことを制限する(第一のアプローチ)、民主主義の発展を阻むような権利行使を制限する(第二のアプローチ)といった個別的な制限事由を列挙するという検討方法によっては、各議論に統一的な方向を見出すことが困難であることがわかってきた。そして、問題を複雑にしているのは、これまでの議論が前提としている「複製行為等を著作権侵害とした上で、一定の場合に権利を制限する」という現行著作権法の枠組みではないかと考えるに至った。技術環境が変化した今日において、著作権の登場当初に有効な手段であった複製禁止権中心主義の妥当性を再検討すべきであるというのは、すでに主張されているところである。 このようなことから、著作権を制限付けるべき要素を列挙する作業を行う前に、著作権法の原点に立ち返って、著作者のどのような利益が守られるべきかという点について考察することが有益であると考えるようになった。したがって、当初の予定よりも視角を広げ、著作権の歴史的経緯を加味して、著作権侵害とすべき行為の類型化を試みたうえで、「公序」の内実を明らかにし、オーバーライド問題への示唆を抽出していきたいと考えている。
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