2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J09826
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
立花 裕樹 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 糖タンパク質 / 不凍糖タンパク質 / ムチン / NMR構造解析 / AFGP |
Research Abstract |
北極や南極周辺などの冷たい海に生息する一部の魚類は、その体液中に不凍糖タンパク質(Antifreeze Glycoprotein ; AFGP)と呼ばれる特殊な糖タンパク質を有しており、その働きにより、凍結することなく生息できる。これらのタンパク質群のうち、糖鎖を有する不凍糖タンパク質は、Ala-Thr-AlaからなるトリペプチドのThr残基側鎖に、Galβ1-3GalNAcαという糖鎖を有する糖ペプチドを基本単位とし、これが何度も繰り返された構造を有する規則配列性の糖タンパク質である(n=4-50)。当研究室では最近、不凍糖タンパク質の全合成に初めて成功した。 本研究では、確立された合成法を応用し、天然型のAFGPとは異なる糖鎖やペプチド配列を有するAFGP類縁体を系統的に合成し、その活性測定やCDスペクトルによる2次構造の解析を行うことで、AFGPの(高次)構造と、機能との相関について、詳細な検討を行った。その結果、AFGPの活性発現には、1)糖ペプチドの繰り返し構造(最低2回の繰り返しが必要)、2)スレオニンに結合した糖鎖2位のアセトアミド基、3)糖鎖-スレオニン間のαグリコシド、4)スレオニン残基のγメチル基、といった構造が必須であり、どれかひとつ欠けても活性がなくなることを初めて明らかにした。さらに、CDスペクトルによる高次構造解析を行ったところ、活性を有した類縁体は全て同じスペクトルパターンを示し、ポリプロリンタイプIIヘリクッス様の左巻き3_1ヘリックスを形成していることが示唆された。一方、活性のなかった類縁体については一般に、このヘリックスが崩れたスペクトルパターン(不規則構造)を示した。これらの結果より、AFGPは、種々の構造的特徴を有することで、水溶液中で左巻きの3_1ヘリックスを形成しており、これにより、特異な活性が誘導されていると予測された。 さらに、合成したAFGPのNMR構造解析をおこない、その立体構造を初めて明らかにした。その結果、CDスペクトルから予測された通り、左巻きの3_1ヘリックス構造をとっており、糖鎖が一方の面を、ペプチド側鎖のメチル基が反対側の面を向いた、両親媒性の分子であることが明らかとなった。この両親媒構造こそが、AFGPの氷晶成長阻害活性において、鍵となる構造であろうと考えられる。
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Research Products
(1 results)