2003 Fiscal Year Annual Research Report
酵母遺伝子欠損株を用いた網羅的解析によるスフィンゴシン1-リン酸の作用機構解明
Project/Area Number |
03J09913
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐野 孝光 北海道大学, 大学院・薬学研究科・特別研究員[DC2]
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Keywords | 酵母 / スフィンゴシン1-リン酸 / トランスポゾン / 脂質 / スフィンゴシンキナーゼ |
Research Abstract |
動物細胞において、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は細胞増殖作用、アポトーシス抑制などの作用を持つ生理活性脂質である。酵母では、フィトスフィンゴシン(PHS)のリン酸化体であるフィトスフィンゴシン1-リン酸(PHS1P)が動物細胞でのS1Pと同様に生理活性を有し、熱ショック応答、ジオーキシックシフトなどの作用に関わっていることが知られている。PHS1P分解酵素DPL1及びPHS1P脱リン酸化酵素LCB3を欠損した株(Δdpl1Δ1cb3)は、培地中のPHSに対する感受性が高まっている。これは培地中から取り込まれたPHSがPHS1Pに変換し毒性を示すからである。この現象を利用し、酵母のゲノムへトランスポゾンをランダムに挿入させることにより、培地中のPHSに耐性となった株を単離した。得られたPHS耐性酵母変異株の原因遺伝子を同定し、LCB4、PBP1、HEM14、UFD4、HMG1、TPS1、PDR5、WHI2、KES1、ERG5の10種の遺伝子であることを明らかにした。得られた変異株がPHS耐性を獲得するためには、(1)PHSの取り込み低下、(2)PHS1P生成低下、(3)PHS1Pシグナル低下の3つが考えられる。まず、PHSの取り込みに影響がある変異株があるかどうかについて調べ、Δpdr5において取り込みの減少が確認された。次に、スフィンゴシンキナーゼLcb4pの発現、リン酸化が減少した変異株があるかどうかについて調べ、Δhem14、Δhmg1、Δkes1、Δerg5において、Lcb4pの発現、またはリン酸化の減少が確認された。これらの結果から(1)PHSの輸送にはPDR5、(2)PHS1Pの生成調節機構にはHEM14、HMG1、KES1、ERG5、(3)PHS1PシグナルにはTPS1、PBP1、WHI2、(4)その他としてUFD4が関わっていることが示唆された。
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