2004 Fiscal Year Annual Research Report
酵母遺伝子欠損株を用いた網羅的解析によるスフィンゴシン1-リン酸の作用機構解明
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03J09913
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐野 孝光 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 酵母 / スフィンゴシン1-リン酸 / 脂質 / スフィンゴシンキナーゼ / ヘム / エルゴステロール |
Research Abstract |
酵母では、フィトスフィンゴシン(PHS)のリン酸化体であるフィトスフィンゴシン1-リン酸(PHS1P)が動物細胞でのスフィンゴシン1-リン酸と同様に生理活性を有し、熱ショック応答、ジオーキシックシフトなどの作用に関わっていることが知られている。私は前年度のPHS耐性遺伝子のスクリーニングで、PHS1Pの生成調節機構に関わる因子として、HEM14、HMG1、KES1、ERG5遺伝子を同定した。これらの遺伝子の変異株では、酵母スフィンゴシンキナーゼLdb4pのリン酸化が低下していた。また、Δhem14、Δhmg1変異株においては、Lcb4pの発現も低下していた。まず、これらの因子のすべてに共通して、エルゴステロール合成に関わることが知られているので、直接エルゴステロール生合成に関わる遺伝子(ERG2、ERG3、ERG5、ERG6)の欠損株を作成し、Lcb4pのリン酸化状態について調べた。その結果、作成したすべてのエルゴステロール合成変異株において、リン酸化の低下が認められた。一方、Lcb4pの量には影響を受けなかった。次にLcb4pの発現について検討を行った。最もLcb4pの発現が低下していたΔhem14変異株を用いて、パルスチェイス実験を行ったところ、Lcb4pの発現は翻訳レベルで低下していることが示唆された。HEM14、HMG1遺伝子はヘム合成に関わることが知られるので、ヘムの異常によってLcb4pの発現が低下した可能性が考えられる。そこで、ヘムによって活性化する転写因子として、Hap1pが知られているので、Δhap1変異株を作成し、Lcb4pの発現について調べた。その結果、Δhap1変異株において、Lcb4pの発現の低下が認められた。これらの結果は、Lcb4pのリン酸化と発現は、エルゴステロールとヘムによって調節されていることを示唆する。
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