2004 Fiscal Year Annual Research Report
ドム語(パプア・ニューギニア)とその周辺の諸言語の調査・研究
Project/Area Number |
03J10049
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千田 俊太郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ドム語 / パプア諸語 |
Research Abstract |
パプア・ニューギニア、シンブー州ドム地域において二箇月間、ドム語の指示詞と引用、動詞連続を中心に統語論、意味論の現地調査を行った。 ドム語において指示詞は空間直示を主たる機能とする、形態統語的な範疇をなしている。この品詞は12の語からなる閉じた類であり、話し手からの距離と相対的高さによる空間分節にそれぞれの語が対応していることがわかった。直示以外の機能として共有知識や主題性、文脈指示の機能があることや、動詞に後続する場合にも名詞に後続する場合と同じ役割を果たしていると解釈できることが明らかになった。 周辺の言語にも同様の指示詞の体系を持つものがあることが調査によって明らかになった。 ドム語の引用構文を調べることで、直接引用、間接引用の記述は二項対立を前提とするのでなく関与するパラメーターそれぞれの振る舞いを記述しなければならないことがわかった。 動詞連続の後行要素が補助動詞的役割を果たし、アプリカティブ、アスペクト、エヴィデンシャリティを表すことがあり、否定を表す要素も歴史的にはこのような動詞連続後行要素に由来すると思われる。この四つの要素のはたらきや形式的特徴を調べた結果、意味的な階層が形式の配列に密接な関係があることなどが明らかになった。ドム語の意味論、動詞連続、エヴィデンシャリティについて研究を進め、その一部を「ドム語の「見る」と「聞く」」としてオセアニア学会大会で発表した(2005年3月21日)。 また、無文字社会であったドム語共同体について社会的・言語的(特に音韻論)に考察を深め、表記の実態の調査結果とローマ字表音表記の限界、ありうべき表記の提案を「ドム語とトク・ピシンの表記に關する考察」として東京外国語大学で発表した(2005年3月4日)。
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