2003 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ近代教育学成立期における身体と言語-その〈系譜学〉的研究
Project/Area Number |
03J10053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
弘田 陽介 東京大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近代教育学 / カント / フーコー / 身体 / 言語 / テクスト論 / 系譜学 / ハーマン |
Research Abstract |
本年度は、上記研究課題の第一年度として、ドイツ近代教育学が成立した18世紀後半から19世紀前半までを一望し、諸思想家のテクスト群を身体と言語という観点からマッピングするような作業を行った。具体的には、近代思想の端緒という突出した位置を与えられているI.カントのテクストを、再度その時代の思想の中に置きなおし、それ以後の200年間にわたって、今私たちが知るような「カント」像が形成されてきた思想状況を捉えるような研究を試みた(「研究発表」欄「『カント』に触れる技-テキストは中断されなければならないのか-」)。 この作業のための視座として、主にM.フーコーの「系譜学」が打ち出した「近代」の思想布置を援用し、カントおよびこの時代の思想の性格を特定すると同時に、逆にカント思想から見たフーコーの「近代」観を検証するような試みも行っている(「研究発表」欄「フーコーのカント/カントのフーコー」)。 この18世紀後半から現在を見る視座と現在から近代教育学成立期を見る視座を交差させ、その交差の焦点となる身体観と言語観を把握することによって、近代の「人間」を私たちが今もそうであるような「人間」にならしめるものそれ自体を、問題にすることができたのではないかと考えている。また、同時に近代教育学が見落としてきた、カント思想ならびに、その同時代人(J.G.ハーマンやFr.シュレーゲル、M.メンデルスゾーンら)が織り成す思想圏、そしてそれらの思想圏およびに近代教育学に根本的な批判を加えうるフランスポストモダンの思想(フーコーのみならず、M.d.セルトー、J.デリダ、G.ドゥルーズらのテクスト論)を交差させる研究手法についても考察を進めることができたことも本年度の成果である。
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