2004 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ近代教育学成立期における身体と言語-その<系譜学>的研究
Project/Area Number |
03J10053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
弘田 陽介 東京大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員
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Keywords | 身体 / 言語 / 教育学 / 18世紀ドイツ思想 / 観相術 / 系譜学 / 汎愛派 / カント |
Research Abstract |
本年度は、主に本研究課題の対象となる、18世紀ドイツの身体論・言語論についての史資料調査を行ない、さらにそれらの史資料の分析手法を検討した。特に平成16年9月-10月までのドイツを中心とした調査においては、18世紀後半に全ヨーロッパ中に普及した観相学や汎愛学校についての原資料や各種博物館での所蔵品等を収集・分析することによって、現地で当時の思想の流通状況とそれら思想が生活実践に及ぼす影響を調べた。テクストとそれを受容する人々との関係性、特に身体と言語との連動の状況を史資料から見い出すことを課題としたその成果は、裏面記載の論文「言葉と身体」としてまとめている。 またそのような言語と身体の連動を探る研究によって、近代に到るまでのヨーロッパが有していた文化的背景、例えば人間交際術や子育ての技法、または宗教結社や政治運動の諸実践と、当時の教育学や心理学、社会理論との結びつきを読み解く研究視座をも設定することが可能となった。 単に教育学にとどまるものではない、この18世紀後半の身体と言語をめぐる思想状況は、従来通りの学問的手法・文献研究法においては収まりきらないものである。それゆえ、私たちにも通底する、18世紀後半に芽生えた近代の萌芽を分析的に切り取って提示するのではなく、その起こりつつあるもののインパクトを受けとめるための研究手法が要求されることになる。メディアとしての人間を解体しながら読み解いていくような、フーコー・ドゥルーズ以後の身体=テクスト論の流れを批判的に受容することで、「系諸学」的と題した本研究の手法を編みなおすことを試みた。このような手法論を1.カントの思想において探求した成果は、裏面論文「「カント」に触れる技----テキストは中断されなければならないのか----」として発表した。
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