2003 Fiscal Year Annual Research Report
過冷却液体のガラス転移における長距離密度揺らぎの時空間スケーリング
Project/Area Number |
03J10060
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 美加 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 過冷却液体 / ガラス転移 / 光散乱 / 相関長 / スケーリング / 時空間相関 / 密度揺らぎ |
Research Abstract |
ガラス形成物質では、構造緩和と呼ばれる緩和現象が最も遅い時間スケールをもつと一般的には考えられており、その特徴的長さはナノメーター程度であるとされている。ところが一方で、理論的予測よりもはるかに大きいレイリー散乱の散乱強度が観測されることが知られており、この波数依存性から数百ナノメーター程度の極めて長い相関長の存在が示唆されている。 こうした長距離の空間相関はFischer clusterと呼ばれており、動的光散乱においては数ミリ秒から数十秒程度の、極めて遅い時間スケールをもつ緩和現象として観測される。以上に述べた未解決現象の起源を解明するため、ガラス形成物質において、動的光散乱法のひとつである光子相関スペクトロスコピー(Photon Correlation Spectroscopy)による実験を行った。 その結果、これまで報告例のないグリセロールにおいても、Fischer clusterによると考えられる極めて遅い緩和現象を観測した。次に、大きさが一定の粒子を試料に混入させ、この粒子とFischer clusterとを比較した。温度変化に対して大きさが変わらない粒子の緩和時間の温度依存性は、温度の低下とともに成長するFischer clusterの緩和時間の温度依存性とは異なるはずであり、両者の違いから、揺らぎの空間相関の温度依存性を、動的手法を用いて直接的に明らかにすることができるはずである。典型的なガラス形成物質であるオルトターフェニルを用いた実験から、揺らぎの時間スケールの波数依存性、温度依存性を測定して拡散定数を比較することで、上記の原理にしたがって、大きさが一定の粒子とFischer clusterとの違いを検出することが実際に可能であることがわかった。
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Research Products
(1 results)