2003 Fiscal Year Annual Research Report
ケイ酸塩鉱物の拡散係数に関する実験的研究と隕石の熱史の解析への応用
Project/Area Number |
03J10076
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 元雄 東京大学, アイソトープ総合センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | ケイ酸塩鉱物 / 拡散係数 / 隕石 / 初期太陽系 / 隕石母天体 / Thermo-Chronology / 消滅核種 / 熱史 |
Research Abstract |
今年度の研究は大きく分けて3つ行った.以下にそれぞれを示す. 1.鉱物単結晶の作成 アイソトープ総合センターにおいてケイ酸塩鉱物であるメリライトの単結晶(オケルマナイト,ゲーレナイト)をチョクラルスキー回転引き上げ法にて合成した.これらの結晶を使用して,2.の拡散実験をアリゾナ大学にて行った. 2.メリライト及び輝石中のカリウムの拡散係数の測定 太陽系で最も古い物質であるCAI(Ca, Al-rich inclusion)中に半減期が10万年と非常に短い消滅核種^<41>Caが発見されている(例えばSrinivassan et al.,1994).^<41>Caの娘核種である^<41>KのCAI鉱物中の不均一分布に着目し,それがCAI形成後の熱史において,どのように攪乱されたかを定量的に議論した.1.で作成したメリライト(オケルマナイト,ゲーレナイト)および天然輝石(ダイオプサイド)中のKの拡散係数をそれぞれ実測した,拡散加熱実験など試料作成はアリゾナ大学にて行い,拡散係数の測定にはアリゾナ州立大学設置の二次イオン質量分析計を用いて行った.実測したそれぞれの拡散係数を用いてCAI形成後の熱史の計算を行い,CAIが隕石母天体に取り込まれたのは太陽系形成に先立つ超新星爆発などによる元素合成の時から170万年以内であることがわかった.この研究は平成15年8月の隕石学会にて口頭・論文発表を行った. 3.かんらん石中のクロミウムの拡散係数の測定 近年,様々な種類の隕石鉱物中に370万年の半減期をもつ消滅核種^<53>Mnの存在の証拠が,^<53>Crの同位体の過剰として発見されている(Lugmair and Shukolyukov,1998).本研究で着目したパラサイトと呼ばれるかんらん石と鉄からなる石鉄隕石の一種は,その特異的な組織から小惑星のコア・マントル付近を形成していたと考えられている.パラサイト中のかんらん石にも消滅核種^<53>Mnの壊変による^<53>Crの同位体比過剰が発見されており(Lugmair and Shukolyukov,1998),かんらん石中の^<53>Crの同位体分布は,パラサイト形成後の熱史を考える上で重要である.そこで,かんらん石中のCrの拡散係数を実験的に求める事により,かんらん石ひいてはパラサイトの熱史を定量的に計算する事が可能になる.本実験は,2.と同様にアリゾナ大学,およびアリゾナ州立大学にて同様の手法により行った.その結果,Omolonと呼ばれるパラサイトは100万年に6から50度の速度で冷却された事.またかんらん石のサイズと冷却速度,および時間の関係の初期温度の依存性を得る事ができた.この研究は平成16年3月の月惑星会議にて口頭・論文発表を行った.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Ito M., Ganguly J., Stimpfl M: "Diffusion Kinetics of Cr in olivine and ^<53>Mn-^<53>Cr thermo-chronology of early solar system objects."Lunar and Planetary Science. 35(CD-ROM). 1324 (2004)
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[Publications] Ito M., Ganguly J.: "Diffusion kinetics of K in melilite and diopside : Constrains on the accretion time scale and thermal history of CAI parent body."Meteoritics and Planetary Science. 38. A74 (2003)