Research Abstract |
1.鉱物単結晶の作成 地球上の岩石,また隕石鉱物中に多量に含まれるケイ酸塩鉱物のうちダイオプサイド(CaMgSi_2O_6)をチョクラルスキー回転引き上げ法にて合成した.単結晶は直径15mm,長さ70mmで,ひび割れ,不純物や泡の混入はないように見えた.単結晶は,結晶の回折パタンをX線回折装置にて,電子顕微鏡とエネルギー分散型元素分析装置により化学組成分析を行った.これらによりダイオプサイド単結晶の合成に成功した事が確認された.今年度からダイオプサイド単結晶中の種々の元素の拡散定数の実験的研究を行う. 2.メリライト鉱物中のBとBeの拡散係数の実験的研究 太陽系形成初期の年代史を考える上で,太陽系で最も古い物質であるCAIと半減期が非常に短く現在では壊変した娘核種の同位体比異常として,その存在が確認される消滅核種の研究は非常に重要である.種々の消滅核種の存在と,それを含む鉱物との組み合わせ,そして娘核種の鉱物中の拡散を計算で,初期太陽系における隕石母天体,またCAIの形成史を定量的に評価する事が可能になる.近年,CAIs中に150万年の半減期をもつ消滅核種^<10>Beが存在していたことが,^<10>Bの同位体の過剰として発見された(McKeegan et al.,2000;Sugiura et al.,2001).Sugiura et al.,(2001)は一つのCAI中の半減期の異なる二種類の消滅核種(メリライト中のB-Be系とアノーサイト中のAl-Mg系)を測定し,それらの鉱物中の分布がCAI形成時/後に撹乱をうけたと報告している.そこで本研究では,娘核種の拡散係数を実験的に決定し,CAI形成時/形成後の熱史を定量的に求める事を目的としている.拡散加熱実験など試料作成と熱史の計算はアリゾナ大学にて,拡散係数の測定にはアリゾナ州立大学の二次イオン質量分析計を用いて行った.850-1100度の温度範囲でメリライトの端成分ゲーレナイト中のBとBeの拡散係数を精度よく決定した.CAIの形成後の隕石母天体内の熱史ではアノーサイト中のAl=Mg系は乱されるが,メリライト中のB-Be系は元々の分布を保持する事が計算の結果確認された.しかしながら形成時の高温領域においては,両系ともに撹乱を受ける事,またアノーサイト中のAl-Mg系に比べるとメリライト中のB-Be系は乱されにくい事がわかった.
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