2005 Fiscal Year Annual Research Report
1分子操作によるF1-ATPaseの回転メカニズムの解明
Project/Area Number |
03J10079
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 陽子 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 1分子操作 / F1-ATPase / モーターたんぱく質 / マイクロ加工技術 |
Research Abstract |
本研究は、回転モーターたんぱく質であるF_1-ATPase(以下F_1)を1分子操作することにより、ATP合成酵素の化学反応と力学応答の共役機購を明らかにすることを目的としている。 ATP合成酵素はF_0とF_1の2つの回転モーターがそれぞれの回転子の部分で連結しており、F_0がH^+の輸送、F_1がATPの合成・水解を触媒している。ATP合成酵素において、F_1は1回転で3つのATPを合成するが、F_0は10個(もしくは14個)のH^+を輸送し、H^+の輸送数は3の倍数ではなく、H^+とATPの数が整数比ではない。このシンメトリーミスマッチは、F_0F_1を連結するγがねじれることにより解消すると考えられる。また、昨年度に明らかにした不活性化F_1の活性化に必要な角度変化のコントロールとしてもγ自身のねじれの有無を調べる必要がある。 本年度はF_1のγを磁気ピンセットでねじるために以下の実験を行った。F_1の回転子γのα_3β_3リング(固定子)から出た部分はβ-sheetとα-helixからなる。この部分のねじれを検出するために、γとα_3β_3リングの接触面にシステインを導入した変異体F_1を作成した。システインによりガラス基盤に固定したα_3β_3に化学架橋したγをねじれば、γ自身の固さが調べられる。この変異体の1分子観察を行ったところ、還元条件下で回転していた分子が、酸化剤を導入すると、回転の停止が停止することが確認できた。また、クロスリンクによる停止位置はATPを結合する位置とほぼ同じ位置であることがわかった。さらに、溶液交換時のステージのずれを防ぎ、酸化剤によるガラス表面へのダメージを最小限に抑えるため、マイクロ加工技術を利用し、フローセル中に逆支弁を作成し、ここに溶液をポンプで導入する溶液交換システムを作成した。このシステムを利用することで1分子に対して実時間で連続的に溶液交換することが可能となった。
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