2003 Fiscal Year Annual Research Report
発育段階の制御における前胸腺刺激ホルモン受容体の機能解析
Project/Area Number |
03J10084
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丹羽 隆介 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 前胸腺刺激ホルモン / 受容体 / 脱皮 / 変態 / カイコ / ショウジョウバエ / エクジソン / P450 |
Research Abstract |
(1)前胸腺刺激ホルモン(PTTH)の受容体候補遺伝子(PGR)のショウジョウバエ相同分子の機能を、遺伝学的に解析することを試みた。まず、PGRに対するRNAi系統およびPGR遺伝子過剰発現系統の樹立を完了した。現在、RNAiあるいは遺伝子過剰発現を行った際の、脱皮あるいは変態の異常の有無を中心に表現型を検討している。 (2)PGRの機能解析のためには、これまで未同定であったショウジョウバエPTTHが必要である。まず、ハマダラカで見出されていたPTTHとの配列相同性を元にして、脳由来のcDNAライブラリーよりショウジョウバエPTTH cDNAを単離した。次いで、ハエPTTHの発現部域を見るために、PTTH遺伝子のゲノム上流域とGFPを融合させたコンストラクトを作製し、トランスジェニックフライを作出した。その結果、前胸腺に軸索を伸ばすPTTH発現神経細胞を脳の左右2対に見出した。また、生化学的実験のために、ハエPTTHタンパク質を組み換えタンパク質として発現させた。ハエPTTHは、鱗翅目昆虫のPTTHと異なり、大腸菌中で極めて集合塊を作りやすいことが判明した。現在、精製条件の検討を試み、PTTHタンパク質の機能的再構成を目指している。 (3)PGRを介したPTTH刺激が、いかにして前胸腺のエクジソン合成を制御するのかを解析するために、前胸腺機能を反映する遺伝子マーカーが欲しい。前胸腺において特異的に機能する遺伝子の同定を試みた。DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現比較から、エクジソン分泌が盛んな時期で発現が高く、かつ組織別に見て前胸腺において特異的に発現するカイコの遺伝子を5つ同定した。このうちの1つは、P450ファミリーに属する新規分子であり、エクジソン生合成の中間段階の代謝過程を担うことを生化学的に示した。さらに、ショウジョウバエにおける一次構造上の相同分子も前胸腺で特異的に発現しており、エクジソン生合成過程に必須の役割を果たすことを遺伝学的手法からも明らかにした。
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