2003 Fiscal Year Annual Research Report
十八世紀英国政治思想史におけるアテナイとローマ:急進主義と啓蒙の対比を中心に
Project/Area Number |
03J10086
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
犬塚 元 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 政治思想史 / 政治学史 / 啓蒙 / 人文主義 / 共和政ローマ |
Research Abstract |
啓蒙期における政治学の転換につき、古代政治社会についての理解の歴史的変転を追跡することを通じて接近を目指す本研究が、初年度の分析対象としたのは18世紀英国におけるローマ史論である。 1 18世紀初頭におけるトマス・ゴードンの議論は、共和政ローマに範を求めて、その盛衰の原因を探るものであって、それは16世紀以来の伝統的な-人文主義・共和主義と呼びうる-思想潮流の延長線上に位置するものであった。ここにおいて解釈の争点となるのは、政治学史研究における共和主義概念である。なぜなら、ゴードンは、同時代の英国について君主を抱きながらも史上最善の共和政体であると捉えたからである。したがって、共和主義研究の出発点ともいえる17世紀イングランドを扱う研究者たちが道徳論(プラトニズム)や機構論(共和政の政治機構をめぐる議論)をもって共和主義思想の指標とする理解を提示してきたが、こうした観点はこの思想潮流の歴史的展開を理解する場合には必ずしも有効なアプローチではない。以上の点については、欧米における近年の研究潮流を整理・検討した書評論文において私の見解を明らかにしえた。 2 他方で、18世紀中葉のエドワード・モンタギューのローマ史論は、使用する語彙こそ継承するものの、議論の主眼は、商業、奢侈、無神論がもたらした習俗の腐敗に対する批判へと移行している(彼の議論の特徴は、アジアからの奢侈の流入というサルスティウスの説明と、アジアからのエピクロス派哲学・無神論の流入というモンテスキューの説明とを接合した点にある)。モンタギューのこのようなアングリカニズムが、デイヴィッド・ヒュームのローマ史論と対抗関係に位置するものであった点につき、本年度夏、海外の研究者とのワークショップで報告し、彼らと意見交換を行った(さらにその後、英文で公表した)。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 犬塚元: "書評Van Gelderen and Skinner, Republicanism, 2 vols., 2002"イギリス哲学研究. 27号. 93-95 (2004)
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[Publications] INUZUKA Hajime: "David Hume's Politics : Inheritance and Renewal of the Traditional Political Thought"Institute of Social Science Discussion Paper Series. F-115. 1-25 (2004)