2003 Fiscal Year Annual Research Report
公共性に着目した人権保護立法と憲法との関係についての研究
Project/Area Number |
03J10089
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榎 透 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 憲法 / 人権保護立法 / 私的権力からの自由 / 表現の自由 / ヘイトスピーチ / 平等 |
Research Abstract |
本研究の目的は、私人間における表現の自由を巡る人権問題を手掛かりに、国家の公共的役割のあり方に着目して、人権保護立法(立法を通して「私的権力からの自由」の確保を目指すこと)と憲法との関係を明らかにすることである。 平成15年度は、差別表現の法的規制を巡る問題を手掛かりとして、ある種の人権を規制することで別の人権を積極的に保護するという法律が、どこまでなら憲法上許容され、どこから憲法に抵触するか、という点からこれらの議論を検討した。具体的には、米国でのヘイトスピーチに関する多くの文献を渉猟・分析し、ヘイトスピーチの法的規制に賛成する考え方と反対する考え方の論理を抽出する作業を行った。その結果、第1に、個人の尊厳、社会秩序の侵害または民主過程への参加を阻害する言論の妥当性を判断する際に、その判断を「思想の自由市場」に委ねるべきと考えるか、それとも国家に委ねるべきと考えるかという点が、2つの考え方の分岐点であること、第2に、2つの考え方を分析する上で、ヘイトスピーチ規制で問題となる「表現」「平等」がそれぞれ憲法上の「表現の自由」「平等」といった価値とどのような関係にあるのか、という視点が重要であること、の2つを明らかにした。 今年度の研究によって得られた知見は、次年度に予定している表現の自由の原理論の文脈で検討する作業を踏まえて、より緻密に分析する必要がある。よって今年度の成果は、次年度の成果を踏まえてより精錬された形で公表する予定である。
|