2005 Fiscal Year Annual Research Report
帝政ロシア内務省と国内統治改革-内相プレーヴェ期を中心として-
Project/Area Number |
03J10127
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
草野 佳矢子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ロシア史 / 近代史 |
Research Abstract |
昨年度までに収集した資料を用いて、論文の執筆を進めた。官僚機構の改革を扱った第2章においては、プレーヴェ内相が、省庁の寄せ集めに等しい中央政府と、中央同様に分裂した地方官僚機構を、内務省と県知事の下に実質的に統合し、またそこに地方自治体をより緊密に結びつけるという統治構造の再編を試みたことを示した。政府官僚の地方自治に対する対応を扱った第3章では、20世紀初頭、専制体制における地方自治のあり方に関して、政府内部でも「教養ある社会」においても意見の一致が存在しない状況で、農村の不安定化や社会・経済事業の発展の必要性から、内務省が地方統治体制の整備に積極的に動き、その結果様々な局面でそれぞれの立場の違いが顕在化し、特に内務省とゼムストヴォ・リベラルの対立が生じた過程を明らかにした。農民・農業問題を扱う第4章では、内務省が大蔵省と対立しつつ、従来の現状維持的な内務省の政策を変更し、農民身分を法的・行政的に隔離する体制から彼らを全身分的な地方社会に融合させる方向に転換したこと、またその結果、こうした政策と内務省の根本的使命である秩序維持との間に矛盾ともいえる現象が生じた点を指摘した。 なお、平成17年12月11日、「近世および近代ロシアにおける法と行政」研究会にて『19世紀末〜20世紀初頭の帝政ロシアにおける官僚と地方自治-非ゼムストヴォ諸県の統治制度改革をめぐる政府内における論争』の論題で報告を行った。また、平成18年2月5日〜13日まで、ロシア、サンクト・ペテルブルク市のロシア・ナショナル図書館において、特に日露戦争時のゼムストヴォの傷病兵援助運動に関する資料を調査した。その他、内務省の活動についての刊行資料や同時代の時事評論、回想録などの関係資料を収集し、また最近の学位論文の概要などを閲覧した。
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