2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10133
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 宏 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | イエズス会 / 神秘主義 / スペイン / アンダルシーア / 近世史 |
Research Abstract |
イエズス会は反宗教改革の担い手として、ヨーロッパにおいてはカトリックの失地回復に努め、海外においては非キリスト教徒への宣教に積極的に取り組んだ活動的な修道会として知られている。しかしイエズス会は、創設当初は必ずしも活動方針が定まってはおらず、どちらかといえば神秘主義的な傾向の強い修道会であった。そのために、ロヨラをはじめとするイエズス会士は、しばしばアルンブラード(神秘主義的異端者)との嫌疑をかけられた。このことが原因で、イエズス会は16世紀の後半以降、神秘主義的傾向を排除し、活動的な修道会へと変質して行くことになる。本年度の研究課題は、イエズス会の神秘主義がどのようにアルンブラードに受けつがれたかを明らかにすることにある。 イエズス会のアンダルシーア管区に関する未完の手稿文書を解読した結果、次のようなことがわかった。第一に、16世紀半ば以降、イエズス会は学校等の教育活動に力を入れるようになると、それまで会の活動の主要な部分を占めていた霊操(神秘主義的な祈りの修行方法)を教える役割を、若くて経験の不足する者に担わせるようになる。すると、本来のイエズス会の霊操のあり方から逸脱した祈りの方法を授ける者が出てくる。この異端的な神秘主義がアルンブラードに流れ込むことになった。第二に、第三代までの総長はスペイン人であり、会の運営は主にスペイン人によってなされていた。しかし第四代総長にベルギー人のメルクリアンが就任すると、スペイン人は重要なポストから排除され、それとともに、イエズス会の古い体質である神秘主義的傾向も一掃された。このとき排除されたスペイン人がアンダルシーアにおいてアルンブラードに神秘主義を伝授することになった。 7月には、スペイン史学会において、フェリーペ二世期のスペインにおける宗教のあり方を理解するために必要な「宗派体制化論」について口頭発表した。
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