2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10138
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀧川 裕貴 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 規範理論 / 公共哲学 / 平等理論 / リベラリズム |
Research Abstract |
1)平等理論の批判的検討 厚生の平等、資源の平等、潜在能力の平等という三つの主要な平等理論の基本的論理を批判的に検討。それぞれの論理構成の相違およびメリット、デメリットを比較した。具体的には、アーネソン、ロールズ、ローマー、ドウォーキン、センらの理論を対象とした。検討の結果得られた知見は以下のとおり。現代平等論は、リベラリズムの中立性原理と密接な関係をもっており、この原理の解釈の仕方によって理論的立場の相違の大きな部分が規定されているということ。厚生の平等は結果中立性と資源の平等は手続き的中立性と結びついること。これらに対して潜在能力の平等は、突き詰めれば中立性原理と矛盾するということ。最終的に理に適った平等理論を構築するためには、中立性原理を放棄する必要があること。以上の内容を論文「平等主義の論理」として発表予定。 2)リベラリズムの中立性原理の検討 現代リベラリズムの主流が標榜する中立性原理の批判的検討。まず中立性原理を標榜する理論を次のように類型わけした。(1)功利主義(厚生主義)、(2)自律性重視、(3)権利論、(4)討議理論、(5)契約理論、(6)社会理論(後期ロールズ)。これらの諸理論を順に検討した。その結果、どの議論も中立性原理を説得的なかたちで提示できていないことが明らかになった。特に、a)中立性原理を厳格に捉えれば、大半の公共財の提供は不可能になること、b)中立性原理では価値多元主義を却って擁護しそこなう結果になること、が指摘できる。
|