2004 Fiscal Year Annual Research Report
道徳的判断と行為への動機付け-道徳心理学研究の再検討-
Project/Area Number |
03J10147
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福間 聡 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | J・ロールズ / メタ倫理学 / 道徳心理学 / 道徳的理由 / C・コースガード / 道徳実在論 / 構成主義 / 動物への義務 |
Research Abstract |
本年度(平成16年度)の前半は「道徳的理由moral reasons」を主題とした。「道徳的理由」とは、我々がそれを認識し、己れの行為の理由として受け入れうるものであるならば、このことのみによってそれが示している行為に対する動機付けが我々において生起するものであると定義される。それでは、果たしてこのような「理由」は存在するのか否か、また存在するならば如何なる諸特徴を有した理由であるのかを解明することを本年度では行った。このようなメタ倫理学(道徳心理学)研究と共に、これまでのJ・ロールズ研究を総括するために私は論文『J・ロールズの分析的倫理学の再構成-共有可能な理由を求めて-』を著した。ロールズには既に規範理学の領域、とりわけ正義論の領域では確固とした地位が与えられており、現在でもなお彼の正義構想に関して多くの議論が展開されている。しかしあまり省みられていないがロールズはメタ倫理学の領域でも大きな貢献をしているのであり、本論文では「構成主義」というカント道徳哲学に由来するロールズの倫理学方法論を取り上げ、道徳的意味論、道徳的認識論、道徳的存在論、そして道徳心理学の観点から詳細な考察を私は行った。 これに加えて本年度の後半では応用倫理学、とりわけ「動物に対する我々の義務」に関する研究にも私は取り組んだ。動物の道徳的地位に関する哲学的な主張はほとんどが功利主義的な観点から提起されている。これに対して私はC・コースガードの議論に注目し、カント的な観点からであっても動物に対する直接的な義務が我々には存在することを提示しうるのではないか、ということを考察した(「我々は人間以外の生き物によっても義務付けられうるのか-動物への義務についての英語圏のカント主義的アプローチに基づく一考察」)。
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Research Products
(1 results)