2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
貞包 英之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国民国家 / 社会学 / 近世史 / 近・現代史 |
Research Abstract |
本年度の研究は、日本における国民国家的社会秩序の成立過程のまず総合的把握を目指し、第一には江戸前期における国民経済の成立をめぐる研究と、第二に現代社会における国民国家的秩序の解体の現象についての考察の二方面からおこなわれた。前者については、国民国家的なものが一六〇〇年前後よりの成長の時代に準備されるとかんがえ、この成長を基礎づけた社会的場の編成のあり方をとくに経済的視野から確認しておきたかったためであり、後者に関しては研究を進めるにあたり、国民国家の解体期ともよばれる現在の社会的場のあり方の現状を見定めておきたかったためである。 第一の研究は、元禄・宝永・正徳期の改鋳をめぐって考察した「金銀の位置」という論文に結実しており、そこでは新井白石の改鋳への反応がおもに分析されながら、金銀という稀少物が「貨幣」という認識をうけることによって新たな政治技術を現象させていく過程があきらかにされている。このような変換の背後には、未曾有の成長とよばれるそれまでの一〇〇年間の急激な経済的成長があり、この成長の中で「村」や「町」といった日本的とよばれもする共同性の場が確立していったことが重要となる。この研究は、「米」や「家」や「性」の問題と関わるより広大な社会的な場の分節を解明するために現在続行中であり、次年度には著作化したいとかんがえている。 第二の研究は、インターネットといった技術的革新と相関しながら、国民国家的というよりも個的な場を散立させつつある現代社会の問題を論じた、第七十六回日本社会学会全国大会での発表、「同一の死」に結実しており、拡大していくグローバリゼーションの経済と相関させながら、現在、改訂論文を執筆中である。
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Research Products
(1 results)