2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
貞包 英之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 社会学 / 日本文化論 / 現代社会論 / 近世史 / 近現代史 / 国民国家論 |
Research Abstract |
二年度目となる本年度は、昨年度とおなじく第一に江戸前期における性愛・資本・家の編成のあり方の考察、第二に従来の国民国家的秩序からはとらえがたい現代の社会性の布置の把握という二方面から研究は実行された。 第一の研究では、近世期に出現する遊郭に集まった遊女の存在形態がとくに焦点として扱われた。遊女という商品をとおして元禄前後の社会の性や家や富にまつわる習俗の再編のあり方を把握することが狙われたのである。分析により、資本と交差して、近代性とも通底するある社会のあり方が形成されたことがあきらかとなり、前年度行われた政治・経済的概観とは別の複層的視角から、後の時代にある同一性として手渡されていくこの時期の社会性の把握が可能となった。こうした研究はいくつかの研究会の場で発表された。 このような近代性の発端の分析は、第二の現在性の分析によって補完され、外延づけられる。近代性の解体(カタストロフィ)としてある現代の社会性の分析は、近代日本における国民国家的秩序の外延と限界を確定し、その内実により幅の広いまた分散した奥行きを付与するとかんがえられるためである。こうした現代を問う分析は、なにより国民国家的というよりそうした規範的生の場を欠いた現在における死の習俗を考察する研究に結実した。その成果としては二〇〇三年度にとくに流行したネット自殺を分析した論文、「浄化された死、あるいは情報の海」(『情況』三・四月号(二〇〇五年))が発表されている。
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Research Products
(2 results)