2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10267
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水野 明日香 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 植民地時代 / ビルマ / 米価 / 米輸出 |
Research Abstract |
本年度はこれまで発表してきた論文を一つの著作としてまとめる作業に専念した。これまで公表した論文は、植民地時代(1852-1948年)のビルマの農村部における土地制度の変化を、一村落区に焦点を当て明らかにしたものであった。これらを一つにまとめるために、経済全体の変化を明らかにし、一村落区の事例で見られた変化を、これに位置づける作業を行なった。 明らかにした経済全体の変化とは、具体的には、イギリス植民地支配下で、米の輸出が増加し、籾の価格が上昇したことに刺激され、デルタの開墾が進んだこと、籾価格は19世紀末から1920年代の前半まで、第一次大戦中を除き、上昇傾向にあったこと等である。籾価格の上昇要因は、堅調な輸出需要とこれに支えられた籾の投機的取引であった。20世紀以前は、耕作者が自ら精米所に直接籾を売却することも行われていたが、20世紀初頭頃から、田舎の仲買人と呼ばれる人々が籾の仲買を行うようになった。さらに、1910年くらいまでには、投機家と称される商人たちが、収穫直後の価格が安い時期に籾を買い、値上がりを待って貯蔵するようになった。第一次世界大戦中から戦後にかけては、籾の投機熱が一層過熱し、イギリス植民地政府も籾価格の上限設定と輸出量の制限により、籾価格を抑制する政策を採った。こうした政策は、独立後の政府による貿易の管理体制へとつながるものであった。世界恐慌下で、籾の価格は大暴落し、さらに、1930年代には輸出市場の狭隘化、タイ、インドシナとの競争の激化にも見舞われ、ビルマの米輸出経済は1930年代に決定的に変容した。その上で、第二次世界大戦中の1941年には、米管理庁の設立、土地買い上げ法など米の生産、流通に政府が大きく介入する政策が相次いで打ち出された。
|