2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10279
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榎 一江 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 労働 / 製糸業 / 経営 / 労務管理 |
Research Abstract |
本研究は、農村社会との密接な関係を基盤として展開した優等糸製糸経営のあり方に着目し、具体的な経営・労務管理の分析から近代日本の女子労働をとらえなおすものである。平成16年度は、前年度の成果を踏まえ、これまで収集した経営資料の分析を継続するとともに、各地に点在する優等糸生産製糸経営に関する資料調査・収集を行った。日本有数の製糸地帯であった長野県では、市立岡谷蚕糸博物館での調査を行い、諏訪製糸同盟関係資料の閲覧・収集を行うとともに、優等糸生産を行っていた下伊那地域に焦点をあて、飯田市歴史研究所所蔵資料の調査を行った。また、「羽前エキストラ」の産地として知られる山形県では、南陽市、長井市での調査を行い、製糸経営資料の残存状況を確認するとともに、南陽市立図書館、夕鶴の里資料館、長井市立図書館、文教の杜歴史教育資料館にて、旧町村行政文書・郷土図書の閲覧・収集を行った。また、本研究の主たる対象となる郡是製糸株式会社のある京都府では、京都府立総合資料館にて京都府庁文書の調査を行い、蚕糸同業組合関係資料、知事事務引継書等の行政文書を閲覧・収集した。これら収集資料の分析により、研究史の空白であった優等糸製糸経営のあり方を解明するとともに、諏訪製糸業に関する近年の研究を相対化することが期待される。 なお、製糸経営資料を分析する一環として、「女工」にのみ注目があつまっていた工場における多様な雇用労働のあり方に着目した「大正期の工場看護婦」『大原社会問題研究所雑誌』554、2005年では、衛生係の仕事に焦点を当て、大正期に工場看護婦という職業が生成する過程を明らかにした。
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