2003 Fiscal Year Annual Research Report
戦時期「南方国策移民」研究-南方軍政要員訓練機関を中心として-
Project/Area Number |
03J10282
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大久保 由理 東京大学, 社会情報研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | グアム / 旧南洋委任統治領 / チャモロ / 戦争体験と記憶 / 開墾隊 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦時下の南方占領地へ派遣された民間人のための二つの訓練機関-拓南練成所・拓南塾をとりあげ、その組織の実態を明らかにするだけでなく、派遣された個人に焦点をあて、なぜ南方へいったのか、訓練機関で何を学び、現地で何をしたのか、聞き取り調査や個人資料を使って明らかにすることにある。そしてさらに、彼らの活動を被支配者側の視点から相対化することが、本研究の最大の焦点である。 この目的に沿って今年度は、拓南練成所の卒業生の主要な派遣先の一つであるグアムにおいて、現地調査を二ヶ月間(2004年1月中旬〜3月中旬)行なった。現地では、ミクロネシア地域最大の調査機関であるグアム大学Micronesian Area Research Center(MARC)を拠点とし、ミクロネシア-日本研究のBallendorf教授や、旧南洋委任統治領下における皇民化教育研究のShuster教授の指導を受けながら、米マイクロフィルム資料および戦後実施された聞き取り調査資料の収集を実施した。当初の目的であったチャモロ人への聞き取り調査についても、現地で既に調査を行っていたSteffy氏の協力を得て、計5人に対して行なうことができた。その過程で、当時「開墾隊」と呼ばれた拓南練成所の卒業生たちの活動だけでなく、日本軍の残虐行為が行われた時期や戦時下の彼らの生活など、これまで活字化されてこなかった戦時下の歴史的事実が明らかになった。 またサイパンでも戦跡巡りを行ない、元通訳の男性、チャモロ人家庭の養子となった日本人女性に対して聞き取り調査を行なった。このことにより、米領グアムと旧南洋委任統治領であるサイパンにおける戦争体験の違いや、戦跡保存のあり方の違いなど、比較して考察することが可能となった。そのほか、戦後の慰霊のあり方など、戦後にも視野を拡げて資料収集やインタビューを実施した。今後は、これらの資料をもとに活字化していく予定である。
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