2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10289
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野田 有紀子 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本史 / 古代史 / 平安貴族社会 / 女性史 / 行列 |
Research Abstract |
今年度は日本古代に行われた行列のうち、女性の行列を研究対象とした。このうち摂関期から院政期にかけての女性行列の形成過程、および行列空間における女性の位置付けの変化についてを、主に出車を素材として検討した。 平安中期以降の女性は外出する際、さまざまな社会的関係のある人物から車を借りることが多いが、その目的は、身分の高い人物の車を用いることによって儀式を権威付け、さらに双方の社会的関係を緊密化し再確認するためであった。このうち出車は、当初は女御代の実家・一族・家司など身内から献上されたが、10世紀後半にはより広い範囲の公卿に分配されるようになる。女性の行列は、男性貴族と同様またはそれ以上に、さまざまな社会的関係に依存して形成された。ただし女性も何らかの役割を担い行列形成に関与していた。女車の特徴でもある出衣については、10世紀後半以降、趣向を凝らした装束を外に押し出すようになる。さらに院政期になると、組織的・統一的な出衣が施されるようになり、男性官人からも正式な装飾とみなされた。行列空間のなかで女性がより公的な役割を担うことになったのである。また出車内の女房の座次は身分に応じて定まっており、院政期には家格の細分化にともないさらに厳格化したが、こうした秩序の成立が、出衣がより統一的・組織的に行われるようになった背景のひとつである。また統一的・組織的な出衣こそが、出車内における女房の役割や位置付けが確立したことを表すものであろう。 以上の成果は、雑誌論文「行列空間における女性-出車を中心に-」(『古代文化』56巻8号、2004年)として公表予定である。
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Research Products
(1 results)