2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10289
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野田 有紀子 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 仁王会 / 儀式 / 貴族社会 / 平安時代 / 空間 / 行列 |
Research Abstract |
平安中後期の「行列空間」の性格や変化を探る上で、密接な関係があると考えられる「儀式空間」の解明は不可欠である。そこで今年度は、宮中で行われる仏教儀礼のひとつ「仁王会」を材料として、平安中後期における儀式空間の性格および変化を考察した。 平安中後期における仁王会儀式空間の変遷を参加公卿との関係でまとめると、以下のようになる。従来、大極殿を中心として開催されていた仁王会は、10世紀後半までに清涼殿に重心が置かれるようになった。天皇との私的関係が貴族社会の構成原理になったことによるものであろう。一方、同時刻には諸院宮でも仁王会が催されていたが、従来は院宮司以外の公卿が参列することは多くなかったと思われる。それが11世紀初頭からは、中宮および東宮仁王会行香に、宮司以外の公卿も参列することが恒例化した。これは貴族社会での個人的関係が重視されるようになったことに加え、道長政権強化が契機となったと考えられる。さらに院政期になると、公卿は上皇や女院など何箇所もの仁王会を巡回し行香に参列するようになる。このことは院政期には上皇を中心とする天皇権力が拡大し、公卿にとって院宮との個別の関係も重視されるようになったこと、また仏教が王権を支える統治理念として重要性を増したために、院宮儀が清涼巖儀に匹敵するほどの公的格付けを与えられたことを意味する。仁王会の儀式空間の変化は、平安中後期における貴族社会権力構造の変質、および仏教の役割の変化を如実に表していたのである。 本稿は雑誌論文「平安中後期の仁王会と儀式空間」(『工学院大学研究論叢』第43巻2号)として公表した。
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Research Products
(2 results)