2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10292
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 華世 東京大学, 史料編さん所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 女院領 / 御願寺 / 安楽寿院 / 荘園 / 八条院領 / 高倉家 / 王家 / 日本中世史 |
Research Abstract |
本年度執筆した論文は、「安楽寿院と御願寺の構造-「安楽寿院文書」の翻刻とその検討-」である。女院領において大きな比重を占めたのは御願寺領であり、安楽寿院領は王家領における最大規模を持つ女院領=八条院領において、最多の所領群をもつ御願寺領であった。したがって女院と女院領とは何かということを考えるには、御願寺と御願寺領について検討することは必須である。しかし安楽寿院をはじめとした御願寺領と女院との相関性や相互機能についてはいまだ不明確な点が多い。そこで安楽寿院を題材にして女院領における御願寺と御願寺領について明らかにすべきと考えた。まずは東京大学史料編纂所所蔵「安楽寿院文書一〜三」の翻刻と検討を行った。周知の史料ではあるが従来は難読な謄写本を参照しており、全体として翻刻されておらず全体像がわからないままであった。「安楽寿院文書」の参照により全体像の理解及び細部の補訂ができ、その全体の検討から、安楽寿院領とは御願寺内に造営された堂舎別所領群の総体であり、堂舎は別々に運営されていたということがわかった。以上のことを「安楽寿院文書一」の翻刻とともに、先述の執筆論文で述べ、現在投稿中である(「安楽寿院文書二・三」の翻刻は別稿予定)。 さらにこの論文を前提として、安楽寿院の草創とその展開を考えた。安楽寿院の堂舎別秩序はその堂舎ごとの造営事情を考えることによってわかる。そしてそこから新御塔の造営とそこに絡む信西政権を見通した。このような草創によって堂舎別秩序が成立し継続していった。そして荘園制が変質していく鎌倉後期には、安楽寿院領でも再編の動きが見られるが、それは安楽寿院と安楽寿院領を高倉家が拝領したことによって行われ、安楽寿院が中世後期まで存続する下地を作った。以上については「安楽寿院と王家領荘園の展開」として平家物語研究会(2004.1.11)にて報告し、現在執筆中である。
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