2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10299
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三枝 暁子 東京大学, 史料編さん所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 京都 / 領主 / 北野社 / 家屋 / 検断 / 穢れ / 西京神人 |
Research Abstract |
1、2003年8月22・23日に東京女子大学で行われた夏季特別講座「中世の京都へ-生活・信仰・寺社-」で、「家屋と領主権-北野天満宮領を中心に-」と題する講演を行った。社会人及び学生を前に、戦国期京都の北野社がどのような領主支配を展開したのかを、検断権の行使という側面から説明した。中世に展開した領主検断は、主として領内で住民が犯罪を犯した場合に、その住民の家を領主が焼く、もしくは壊すという形態をとった。それは従来の研究で明らかにされているように、当時の人々の中に、犯罪は穢れであり、その穢れを祓う必要があるとの観念が働いていたためである。ただし北野社領の場合、家を焼いた事例はみられず、家を壊してその結果できた木材を売る、或いは家を壊さずに建売するという形態をとっている。そこで戦国期の都市部の寺社領においては、家屋を保存し、家の間口別に賦課する屋地子の収入を安定化させようとする領主側の経済利益優先主義が、次第に検断のあり方を変質させてゆくのではないかという私見を述べた。なおこの講演の内容をさらに深化させ、「戦国期北野社の闕所」と題する論文を先ごろ執筆した。 2、上記の講演準備を契機として、北野社及び旧社領域の現地調査を8回ほど行った。その過程で、中世の史料に散見される北野社「西京神人」の末裔のお宅が現在も数件ほど存在していることを知り、「神人」宅の聞き取り調査及び所蔵資料の調査を行った。また活字史料である『北野天満宮史料』及び『北野社家日記』の中から、「西京神人」に関する記事を抽出し、整理した。今後「西京神人」の歴史について、論文を執筆する予定である。 3、この他、愛知・真清田神社や宮城・松島瑞巌寺など各地の寺社の現地調査や資料調査などを行った。
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