2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10299
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三枝 暁子 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 戦国期 / 北野社 / 領主 / 闕所 / 土地所有 / 家屋 / 神人 / 京都 |
Research Abstract |
1.2004年9月に刊行された勝俣鎭夫編『寺院・検断・徳政-戦国時代の寺院史料を読む-』(山川出版社)にて、論文「戦国期北野社の闕所」を発表した。中世に展開した領主検断は、主として領内で住民が犯罪を犯した場合に、その住民の家を領主が焼く、もしくは壊すという形態(=「闕所」)をとっている。そして戦国期の北野社も、家屋を破却していたことがすでに先行研究で指摘されている。ただし北野社の場合、検断得分の分配にあたっては、家そのものではなく解体した家材の売却代金が折半されたこと、闕所屋の焼却処分の例は一例もないこと、その原因が検断得分である闕所屋に対する北野社側の固執と、廃物・廃材を商品として流通させる室町京都という北野社の立地条件にあった可能性のあること、などの点も指摘されている。しかしその一方、北野社が破却すら行なわず闕所屋を売却している事例や、家屋売買一般に際し家屋を「壊す」ことを強く規制していた事実も存在する。そこで本稿では、特に闕所における家屋(建造物)の<売却>行為に注目することにより、戦国期北野社の闕所の特質について検討した。その結果、北野社における闕所屋処分の基本的形態は、検封ののち壊さずに売却するというものであり、闕所屋の売却が検断の場において破却にかわりうる意味を持ったこと、具体的には土地所有関係を一新することにより穢れを祓う意味を持ったことなどを明らかにした。そして単なる売却処分としての闕所屋処分が成り立った背景に「百姓」の家屋所有権・自専権の拡大や「家主」・「家持」層の台頭という問題のあったことなどを指摘した。 2.北野社の神人について調査をし、それらの成果を東京大学の近世史研究会にて報告した。 3.大津市埋蔵文化財センターの協力を得て比叡山で2度ほどフィールドワークを行った。 4.この他、中世都市・流通史懇話会、身分的周縁研究会などの全国規模の研究会に参加した。
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Research Products
(1 results)