2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10300
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 裕子 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本中近世移行期社会論 / 土豪 / 村落 / 近江国 / 融通 / 土地所有 |
Research Abstract |
本年度も、昨年度に引き続き、近江国(滋賀県)における文書調査、フィールドワークを行ない、戦国から江戸時代における土豪の存在形態や在地における機能、土地所有について調査した。 近江国においては、甲賀郡域の土豪の調査として、甲賀市水口町の山中氏と甲賀市甲賀町の大原氏に関わるフィールドワークを行った。具体的には、山中氏に関しては、宇田公民館にて「宇田区有文書」、水口町立歴史民俗資料館にて「宇川区有文書」の写真撮影を行うとともに、水口町宇田の山中氏館やその若党組に関する聞き取り、また山中家墓地の墓碑調査を行った。一方、大原氏に関しては、京都大学文学部古文書室にて「大原勝井家文書」の写真帳を閲覧し、現地では甲賀市甲賀町域に現存する地籍図の閲覧・写真撮影を行った。また、滋賀県立図書館において、甲賀市域の土豪と村に関する文書写真を閲覧し、必要な分のコピーを入手した。これら調査の成果は、現在翻刻・分析作業を進めているところであるが、これら土豪の存在を村との関係で理解するためには、さらなる聞き取り調査が必要になると考えられる。 また、昨年度調査を行った坂田郡八条村(現長浜市八条町)の福永家に関しては、その成果が「中近世移行期の人売り慣行にみる土豪の融通-『生命維持』と『村の成り立ち』の視点から-」(藤木久志・蔵持重裕編『荘園と村を歩くII』<校倉書房、2004年11月刊)と、「売買・貸借にみる土豪の融通と土地所有」(渡辺尚志・長谷川裕子共編『中世・近世土地所有史の再構築』<青木書店、2004年10月刊)にまとめられた。 さらに、昨年度調査を行った山城国和知荘の片山氏についても継続して調査を行い、中村の「片山家文書」の写真撮影と、片山株に関する聞き取り調査を行なった。その結果、片山家の分家分出過程とその存在形態、また株の組織の構造や文書伝来の実態について具体的に解明されつつあるため、現在その成果をまとめる作業を進めている。
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