2003 Fiscal Year Annual Research Report
金属欠乏星におけるS過程元素合成と銀河初期の化学進化への影響
Project/Area Number |
03J10323
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩本 信之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 金属欠乏星 / s過程元素合成 / 化学進化 |
Research Abstract |
初期世代(水素やヘリウムより重い元素を含まない)星の進化やその進化の過程で起こるヘリウム燃焼層への水素の混入による急速な陽子捕獲反応過程を追うために、核反応ネットワークを陽子過剰側へ拡張し、初期世代の中質量(8-12倍の太陽質量[M_【of sun】]をもつ)星の進化を漸近巨星分枝(AGB)段階まで追った。 1.超新星爆発を起こす恒星の下限質量 初期世代の12M_【of sun】モデルは、中心での炭素燃焼後に残される酸素・ネオン・マグネシウム(ONeMg)中心核の質量がチャンドラセカール限界質量を超えているために、進化の最終段階には重力崩壊型の超新星になることを示した。また、これよりも質量が小さい星では、ONeMg中心核の質量が限界質量よりも小さいこととAGB段階での質量放出機構が未解明であるために、電子捕獲型超新星か白色矮星のどちらかになる。従って、白色矮星が残される上限質量として11-12M_【of sun】が得られた。 2.中質量AGB星の進化と表面元素組成の変化 9-12M_【of sun】の星では、ヘリウム燃焼層への水素の混入が起こり、窒素が大量に合成された。もしこの質量範囲にある星が超新星爆発を起こすと、大量の窒素を放出し、銀河系の初期段階において重要な窒素供給源となることを示した。さらに、9-11M_【of sun】の星がAGB段階へと進化すると、外層に発達している対流層の底部での水素燃焼により窒素に加えて炭素が大量に合成され、星表面からの質量放出により星間空間へと還元される。この炭素と窒素は、現在、銀河系ハローで観測されている炭素・窒素過剰星における炭素・窒素の起源となりえる可能性があることを示した。
|
Research Products
(1 results)
-
[Publications] N.Iwamoto, T.Kajino, G.J.Mathews, M.Y.Fujimoto, W.Aoki: "Flash-Driven Convective Mixing in Low-Mass, Metal-Deficient Asymptotic Giant Branch Stars"Astrophysical Journal. 602. 377-387 (2004)