2004 Fiscal Year Annual Research Report
高圧含水マグネシウムケイ酸塩の構造と物性に関する理論的研究
Project/Area Number |
03J10333
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土屋 旬 (三牧 旬) 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 水素結合 / 第一原理計算 / 高圧含水鉱物 |
Research Abstract |
本研究の目的は地球内部への水の輸送にかかわる,また地球内部における水の貯蔵相になり得る高圧含水マグネシウムケイ酸塩(DHMS)の構造と物性を明らかにすることである。DHMSの中でも特にマントル遷移層や下部マントル圧力条件下において安定な含水D相、スーパーハイドラスB相、含水B相、含水Y相を対象に研究を行う。 高圧下での実験による水素位置の決定は技術的に難しいため、第一原理電子状態計算によって理論的にそれを決定する。本研究に用いた計算手法は擬ポテンシャル法に基づく第一原理電子状態計算法である。まず水素位置を決定し、実験で報告されている格子定数との比較により計算結果の検証を行った。さらに高圧下での圧縮挙動について調べた。計算により得られた圧縮挙動は非常に実験結果と一致した。さらにこの含水D相の水素結合は40GPa以上で対称化され、水素が隣り合う酸素の中間に存在することが予想された。この圧力誘起水素結合対称化転移により含水D相の圧縮挙動が明らかに影響を受けることも判明した。体積弾性率はこの構造変化により20%以上増加する。この転移は、以前報告したδ-AlOOHの圧縮挙動と類似する。転移圧は水素の量子性や温度効果を考慮するとさらに下がることが予想され、実測で報告されている20GPa付近での圧縮挙動の不連続変化と関係すると考えられる。 さらに実験結果との比較のために、この含水D相の高圧下における第一原理格子振動計算を行った。O-H伸縮振動の振動数が加圧に伴い、水素結合対称化転移圧まで急激に減少し、対称化後はわずかに増加傾向にあることが判明した。これは氷の高圧相の格子振動測定とも調和的である。
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Research Products
(6 results)