2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10345
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 美希 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ガラス / 履歴 / 揺動散逸 / 適応 / 不可逆循環 / ネットワーク / 自己回避 |
Research Abstract |
今回の研究実績は三つの部分からなっている。一つはガラスの履歴依存性に関するLABSの研究、一つは大腸菌の適応現象の分析、一つはネットワーク分析である。これらは別個の大自由系であるが、同等な構造が部分的に共用されており、お互いの系を参照しつつ研究がすすめられている。 LABSとは、ガラス転移を示す一つの理想モデルである。前年に作成した履歴依存性を網羅的に調べる方法によりこの系の履歴依存性を調べると、この系は非常に単純なメモリ構造をもっていることがわかった。外部から摂動を加えない限り系は情報を保持続けるが、摂動を加えたとたんに全てを忘れるようになっていた。このことの簡潔な表現として、系に(拡張された)揺動散逸定理と呼ばれる性質があることを示した。 大腸菌の適応現象とは、外界の環境変化を大腸菌に与えたときに、最初はその変化に苦しみだすが、時間が経つにつれて慣れて元の状態に戻ることを意味する。この現象は、細胞表面の受容体のメチル化によってなされていると言われている。今回我々は適応現象を生成する受容体モデルを提案し、このモデルのノイズに対する振る舞いを調べた。これによって、ノイズによって生成される受容体の状態のゆらぎと、受容体がどれほど適応できるかを示す能力との間に密接な関係があることを示した。これは揺動散逸定理の一種である。 ネットワークは近年流行を見せている研究対象であるが、今回私は自己回避というタイプの履歴依存性を持つ対象がネットワークを形成するようなモデルを作成した。この系がどのようなネットワーク構造を生成するか調べると、その自己回避長が重要なパラメタとなり、短い場合にはループ形成、長い場合にはランダムネットを生成し、その中間的長さにおいて寄生・共生タイプのネットワークを生成することを示した。寄生・共生タイプの構造の生成はこのモデルの強い特徴である。
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Research Products
(1 results)