2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10345
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 美希 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 記憶 / ガラス / 計算 / 脳 / 不安定性 |
Research Abstract |
申請者は研究課題であるガラスの履歴依存性について主に数値シミュレーションを用いて研究を行った。この研究遂行においては、特に「履歴」および「記憶」という言葉で表される他の様々な現象との関係性が重視された。 研究の実際的な内容は、ガラスモデルへ様々な操作を施すことによって、その影響がどのようにガラスの内部へと組み込まれていくかというのをもモニターするという形をとった。その結果、外からの微小な操作の影響を、内部でカオスのように増幅させる性質が重要であり、数理的形式化するにはこの弱い不安定性の記述を取り入れなくてはならないことが示唆された。こうしてガラスの履歴現象は、計算機のように不安定性を完全に排除することによって成立するものとは異なる形式であると結論づけた。この数値計算を用いた特徴抽出研究は、その後計算理論との対応思考としての幾何学的研究へと進んでいった。計算論とは計算機の理論であるが、すでに数理理論として確立している計算論における記憶の扱いとガラスの履歴と関係づけを試みることは必須である。実際の方法論としては、計算論上の計算能力を幾何学的集合として埋め込めるという手法を行った。そこでこの埋め込み方法を提案し、この集合の性質を調べることによってガラスの持つ記憶能力を検証した。その結果、上記のガラスの重要な性質である弱い不安定性がこの集合の形として容易に表現できる上に、ガラスの持つ記憶能力とコンピューターの持つ記憶能力を、異なる形の集合として表現された。これによってガラスの持つ記憶能力の特徴を明確に抽出することに、またこの手法を利用すれば、今後ガラスに限らない記憶一般論として展開していくことが考えられる。
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Research Products
(1 results)