2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10346
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
望月 維人 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 遷移金属酸化物 / ペロフスカイト型チタン酸化物 / 軌道秩序 / 磁気相転移 / Co酸化物超伝導体 / 強磁性揺らぎ / スピン三重項超伝導 / 揺らぎ交換近似 |
Research Abstract |
1,ペロフスカイト型チタン酸化物RTi03における磁気-軌道構造 ペロフスカイト型チタン酸化物RTiO3の磁気相図は、今まで実験的に精力的に調べられてきたが、多くの不思議な振舞いを見せ、理論的にほとんど解明されていない状況にあった。この系のように軌道自由度のある系では強磁性状態が素朴に期待されるため、RTiO3(R=La, Pr, Nd, Sm)が示す反強磁性状態の出現機構はそもそも謎であった。私は、この系では、GdeFeO3型歪みによって変位した希土類イオンがTiイオンサイトに結晶場を作り、その結果、従来縮退していると考えられてきたt2g軌道の縮退が解かれ、ある軌道秩序を誘起することを示した。さらに、その軌道秩序状態のもとでは等方的ハイゼンベルグ模型で記述されるような反強磁性状態が安定化されることを示した。この理論の画期的なところは、従来ペロフスカイト型遷移金属酸化物における電子構造にほとんど重要な役割を果たさないと考えられていた希土類イオンの重要性を始めて指摘した点にある。私は、この希土類イオン結晶場を考えると不思議とされていたNMR,中性子散乱、共鳴X線散乱の実験結果や、磁気相図上でのネール温度の振舞いなどが統一的に説明されることを示し、論文にまとめた。また、一連の研究結果を2004年3月に開催される日本物理学会シンポジウムで、招待講演として講演する予定である。 2,Co酸化物系超伝導体の超伝導ギャップ構造と超伝導機構の研究 昨年発見されたCo酸化物系超伝導体は、Co酸化物で初めての超伝導体であることや、三角格子を持つこと、さらにバンド計算からt2g軌道自由度が重要である可能性が指摘されていることもあり、実験理論の両面から大変興味をもたれている。私は、この物質の電子構造や超伝導を調べるために3重のCot2g軌道の自由度を取り込んだ多軌道ハバード模型を構築した。さらに、この模型の揺らぎ交換近似による計算プログラムを開発した。この計算プログラムを使い超伝導ギャップ構造やスピン、電荷の揺らぎを調べた。その結果、この系では軌道自由度とフント相互作用のために強磁性スピン揺らぎが発達しており、それを媒介したスピン3重項f波超伝導が実現している可能性があることが分かった。「軌道+フント」によるスピン3重項超伝導が実現している系は今までに例が無く、この物質はその最初の例となる可能性がある。私はこの研究結果を2004年3月に開催される日本物理学会で発表する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 望月維人, 今田正俊: "Orbital-Spin Structure and Lattice Coupling in RTiO3 where R=La, Pr, Nd And Sm"Physical Review Letters. 91. 167203 (2003)